ECサイトの土台となるカートシステム
Chapter2でも述べたとおり、正しくダイレクトマーケティングを行い、顧客を維持していくためには、モールではなく自社サイトとしてのプラットフォームを持つことが非常に重要です。自社サイトを持つことで、顧客との繋がりを強固にでき、販売方法も自由にコントロールすることができるのです。
商品販売を行うためのプラットフォームは、様々なベンダーが提供しています。いわゆるカートシステムです。多種多様なカートシステムが提供されている分、どのシステムを採用するのかはとても重要です。意外にも、カートシステムの採用基準が曖昧なまま利用しているメーカーも、非常に多いのです。
インターネットを中心としたマーケティングの各施策は、基本的にはそのシステムに依存します。利用できない機能があれば、あとから実装することは難しくなってしまいます。つまり、いくら良い施策が思いついても実行に移せないのです。自社にあったプラットフォーム選びは、慎重に行う必要があります。
ではどのような基準をポイントにシステムを選ぶとよいのでしょうか。次節からご紹介していきます。
顧客の「買いやすさ」から考える
ECサイトで商品を販売する際、どの要素が一番売上にインパクトを与えるのか。その質問にずばり答えるのであれば、それは「決済方法の種類」です。
商品が購入される上で最も大事な瞬間は、顧客が「買おう」と決断したときです。そのときに同時に訪れるハードルは、決済まで誘導できるかという点です。「買おう」と考えても、決済までスムーズに誘導できなければ、顧客の気持ちが冷めてしまい、カゴに入ったまま商品が購入されない、いわゆる「カゴ落ち」状態が起こってしまいます。このように、決済がハードルとなってサイトから離脱してしまうケースは非常に多いのです。
そう考えると、「決済方法がどれだけ充実しているか」ということがとても重要なポイントであることをわかっていただけるのではないでしょうか。できるだけ簡単に決済ができれば、販売機会の損失を防ぐことができるのです。
自社都合ではなく、顧客の視点で考える
比較的大きなメーカーにありがちな話として、社内のしがらみのせいで通販の仕組みがなかなか整えられないといったことがあります。会計的に処理しやすいという理由で、決済方法が限られてしまっているケースです。
インターネットショッピングはもはや一般的な時代なのに、その事実を理解せずに「代引が最も安全」「代引の処理のほうが楽」というメーカーの内部事情から、消費者が購入しづらい状況を生み出してしまっているのです。
もし、本書をお読みのみなさんの会社で、決済の仕組みが代引きしかないというような状況なのであれば、すぐにでもカートシステムや基幹システムを見直して、最低でもクレジットカードの導入はするべきです。
いまや、ほとんどの決済サービスにはクレジットカードが含まれています。自社のシステムとの連携の面で難しいなど別の理由がある場合も、諦める必要はありません。なにかしら方法はあるものです。それだけクレジットカードの導入は大きく売上をあげる要素となり得るのです。
本気で商品を売ることを考えるなら、最も重要なことは顧客の視点に立つことです。実際にどのような状況で顧客が商品を買おうとしているのか、これを販売する側も理解しておかなければならないのです。通勤中の電車の中で買おうとしているのかもしれませんし、仕事の休憩中にPCから購入しようとしているのかもしれない。だからこそ、あらゆる状況を想定して、決済方法の選択肢は多くしておいたほうがいいのです。
クレジットカードだけでなく、代引き、コンビニでの後払い、AmazonPayや楽天ペイなど、対応可能な決済手段をしっかりと整えておくことも大事です。
通勤中の電車内で、スマホから商品を買おうと思ったとき、わざわざクレジットカードを財布から出すのはとても億劫なものですし、安全面での問題もあります。そんなとき、決済方法がクレジットカードしかないと、販売機会は失われてしまいます。しかし、例えば自社サイトの決済方法にAmazonPayが対応していれば、Amazonにログインするだけで決済ができるため、スムーズに購入まで誘導することができるのです。
このように、自社のシステムに顧客の生活動線を考えた機能を備えておくことは、とても重要です。
Amazon Payで売上が変わる?
実際、私がコンサルティングをしたあるメーカーでも、AmazonPayを導入した途端、売上が大きく上がったという例があります。しかもそのケースでは、ランディングページからの売上が伸びたのです。つまり、既存顧客ではなく、完全な新規顧客からの購入が伸びたということになります。消費者が「欲しいな」と思った瞬間に、財布からクレジットカードを出す必要なく、スムーズに決済が完了できることが大きかったのでしょう。
スマホで物を買うことが一般的になり、自宅以外の場所でもショッピングをする機会が増えています。電車内や会社、カフェなど、人目が気になる場所でのショッピングでは、クレジットカードを出す必要のない決済手段はとても便利なのです。
また最近ではPaidyという決済サービスを利用するメーカーも増えてきました。これは電話番号だけで後払いができるという決済サービスです。決済金額の上限は3万円と制限はありますが、審査もいらずに利用できるという優れたサービスです。クレジットカードを持つことができない若い人などの決済方法の手段として、とても便利です。
このような新しい決済サービスも最近ではたくさん出てきています。状況に応じて顧客も都合のいい決済手段を選ぶことができるため、決済方法はできる限り充実させておくことで、販売機会の喪失を防ぐことができるのです。