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Toggle正しいターゲットに確実に届ける方法
広告訴求戦略のところでは、1つの広告には1つのメッセージを乗せることが大切だということをお伝えしました。ただ、それがうまくできたとしても、ターゲットに届かなければ意味がありません。ターゲットに届く広告のことを、私たちは「いい広告」と評価しています。
あなたの商品を求めているターゲットに広告を届ける、すなわちいい広告をつくるためには、3つの要素が必要です。1つめが「マーケット(Market)」。マーケットは市場のことですから、届けたいターゲットのことを指します。2つめが、「メッセージ(Message)」。何を伝えるのか、どう伝えるのかの部分です。そして3つめが「メディア(Media)」です。どの広告媒体に広告を掲載するのか、ということです。マーケット・メッセージ・メディアのそれぞれの円がすべて重なったとき、ターゲットに届くいい広告ができます。
これらの頭文字を取って、ここでは「3Mの法則」と呼ぶことにします。
この「3Mの法則」は、広告を考えるときの指標となります。円がまったく重ならない、もしくは2つしか重ならないような広告は、あまり効果が期待できません。
たとえば、20代女性向けに美容サプリメントを売りたいと考えたとき、ターゲット層に人気のあるインフルエンサーをモデルに起用し、コピーも訴求力の高いものができたとします。
しかし、20代女性がまったく読まないような雑誌、たとえば50代女性がメインターゲットのライフスタイルマガジンなどにこの商品の広告を載せてしまうと、商品が素晴らしいかどうかの前に、そもそもターゲットに届けることができません。
同じく20代向けの商品について、若者が多く集まる渋谷の駅の中に広告を出したとします。イメージモデルも20代の女性が憧れる人を選びました。しかし、コピーがまったく20代女性に刺さらないような内容だったとしたら、商品の魅力が十分に伝えられず、やはりうまくいかないのです。
3Mの3つの円が1つずれてしまうだけで、その広告で効果を出すことがとても難しくなってしまいます。いい広告を出すためには、3Mの円を意識して、3つの円をしっかりと重なり合わせることを意識しながら、広告をつくってみてください。
この法則を活用していい広告ができたとしたら、「どこで広告するか」を具体的に詰めていきます。ここは、先ほどの3Mの「メディア」の部分、広告媒体にあたります。
広告媒体には、大きく分けてインターネット上の「オンラインメディア」とインターネット以外の「オフラインメディア」の2つがあります。
オンラインメディアの広告
<GoogleやYahoo!関連サービスに広告を出す>
検索エンジンであるGoogleやYahoo!には広告を出すことができますが、検索エンジン上に広告を出すだけでなく、Google、Yahoo!に関連しているさまざまなサービスのホームページにも広告が表示される仕組みになっています。
Yahoo!JAPANのトップページを開くと、中央にニュース、右側にアカウントのログインやポイント確認などのメニューが表示されており、左側には「ショッピング」や「PayPayモール」など、さまざまなサービスのメニューが連なっています。
ヤフオク!やYahoo!モバゲーなどのほか、ZOZOTOWNや一休.comなどもメニューに名を連ねていますが、実はこれらはすべてYahoo!ネットワークに含まれているサービスです。
Googleも同じように、Googleの検索画面のほか、Googleと提携しているサービスのホームページにも広告が表示されます。さらに、個人が趣味で運営しているブログなどのコンテンツにも広告が表示されます。
GoogleとYahoo!の関連サービス、それぞれのネットワークに参加している個人のブログなどを合わせると、インターネット上のおそらく90%はカバーできる状態です。
このときに気になるのが、GoogleとYahoo!のどちらかを選ぶとしたら、どちらを選んだ方が広告効果が高まるのか、ということではないでしょうか。
以前は、GoogleよりもYahoo!の方が利用者の年齢層が高めとか、女性のユーザーが多いと言われていました。そのため、化粧品の広告を出すのなら、GoogleよりもYahoo!の方がいいのではないか、と考える人も多くいました。
しかし、今は特に気にする必要はありません。なぜなら、誰に広告を表示させるかをこちらで選ぶことができるからです。少し専門的な言葉を使うと、「ターゲティング設定」ができるというわけです。
<InstagramやFacebookに広告を出す>
InstagramやFacebookなどのSNSにも広告を出すことができます。SNSの大きな特長は、アクティブユーザーが非常に多いことです。Facebookには必ず1日1回はログインする人も多いでしょうし、Instagramに至っては、1日に何度もログインして好きな人の投稿をチェックしている人も多いのではないでしょうか。
アクティブユーザーが多いということは、それだけ多くの人と、かつ大量に接点が持てるということです。また、Instagramには「Instagramショッピング」という機能があります。これは、Instagramの投稿画面から、着ている服や持っているアイテムなどをダイレクトに購入することができる機能です。
たとえば、インフルエンサーが気に入っている商品を紹介すると、そのインフルエンサーのファンの方やインフルエンサーをセンスがよいと評価している人などが、同じ商品を購入するという動きがよく見られます。
このときファンの方たちは、その商品名を検索して商品を探したり、インフルエンサーが投稿に貼り付けているECサイトのURLをクリックしてサイトに飛んだりする動きが一般的でした。
しかしInstagramショッピングでは、投稿画面上でECサイトのURLとリンクができる機能が備わっています。ユーザーは投稿から直接ECサイトの該当商品のページに飛び、簡単にインフルエンサーたちと同じ商品を手に入れることができるのです。
Instagramはこのほかにも、ターゲティングの精度が非常に高いことでも有名です。ちなみに、InstagramはFacebookと連動しています。Facebookは実名登録制のSNSなので、Twitterなどと比べて、年齢や職業、居住地域などのパーソナルな情報を大量に保有しています。
そのFacebookと連動しているということもあって、Instagramのターゲティングの精度は高いのです。
また、化粧品広告に人気なLINEやスマートニュースなどのニュース系アプリの広告などにも配信することができます。
実はこのように、オンラインメディアは無限にあるように見えて、広告を出すという観点から見ると選択肢は数えるほどしかないのです。Yahoo!とGoogleで90%近いユーザーにリーチできます。オンラインメディアに関しては、媒体にこだわる必要はあまりありません。
広告の配信手法
<検索連動型広告>
GoogleやYahoo!の検索エンジンを使って検索をかけるとき、検索結果の表示画面の上に広告が表示されますが、これが検索連動型広告です。検索連動型広告は、キーワードでターゲティングをしています。
<ディスプレイ広告>
Yahoo!JAPANのトップページを開くと、バナー型で広告が表示されています。これがディスプレイ広告です。
ディスプレイ広告も、ターゲティングの設定によって誰に広告を表示するかを選ぶことができます。自分のスマホで開いたYahoo!JAPANのトップページと他の人のスマホで開いたトップページを見比べてみてください。表示されている広告が違うことがおわかりいただけると思います。
なぜそうなるかというと、ターゲティング設定がされているからです。ディスプレイ広告は、人でターゲティングすることもできますし、サイトを指定して広告を出すこともできます。
<リマーケティング広告>
過去にサイトを訪れた人を追跡し、その人に対して広告を表示するのがリマーケティング広告です。ネットサーフィンをしていると、過去に興味があって調べていた商品の広告が表示されるようになったという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。あれがリマーケティング広告です。
リマーケティング広告は、興味があって一度ECサイトなどを訪れた人に対して表示するため、他の広告に比べると成約率が高いという特徴があります。
<SNS広告>
SNS広告については先ほども少し触れましたが、SNS上のプロフィールに紐付いたターゲティングができるため、ターゲティングの精度が高いことが特長です。
<動画広告>
近年急激に伸びているのが動画広告です。動画広告はその名の通り、画像やテキストではなく動画スタイルになった広告のことです。テレビCMやYouTube、TikTok広告などがその例です。短時間で印象的なメッセージを伝えることができ、化粧品や健康食品広告でも実績が出始めている非常に有望な広告手法です。ほかの広告手法に比べて配信単価が圧倒的に安価なのも魅力的です。
オフラインメディアの広告
オフラインメディアは、主要なところでは雑誌広告やテレビのインフォマーシャル、ポップアップストアなどがあります。
美容系雑誌や健康系雑誌では純粋に広告として掲載するほかに、記事のなかで取り上げてもらう記事広告などもあります。商品を知ってもらい、宣伝できます。
テレビのインフォマーシャル(インフォメーションとコマーシャルを合わせた造語)は、コマーシャルよりも尺が長い広告手法です。ストーリー仕立てになっていることが多く、「紆余曲折があったもののハッピーエンドになったのは、この商品のおかげです」というような流れで商品を訴求する構成のインフォマーシャルもよく見かけます。
インフォマーシャルで広告を打っている化粧品メーカーや健康食品メーカーは非常に増えています。また、テレビショッピングもオフラインメディアの広告手法です。
ポップアップストアとは、期間限定で出店される形式の店舗のことです。よく百貨店やショッピングモールなどでは企画展や催事をおこないますが、そこで出店される店舗も含みます。
オフラインメディアには、このほかにも新聞やラジオ、折り込みチラシ、商品を届けるときに同梱する同梱広告などもあります。
広告媒体(メディア)の特性
広告を出すにあたって、前提知識として持っておいていただきたい大切なことがあります。それは、広告媒体には、認知を高めることを主目的とする「認知メディア」と、売ることを目的とする「刈り取りメディア」という2つの種類があるということです。
媒体によってどちらに属するかが違いますから、目的に応じて媒体を選ぶことが重要になってきます。
<商品を知ってもらうための「認知メディア」>
ターゲット層に広く商品を知ってもらい、認知度を高めることが目的の認知メディアは、掲載されることによって話題を広げる、掲載されたこと自体がネタになるようなメディアのことです。
認知メディアの場合、掲載されたことによって売上があがるか、商品の売れ行きがよくなるかといったことは考えません。認知メディアのいい例が雑誌です。新商品のリリースのときに雑誌に商品が掲載されたとしても、そこから大量に注文が入ることはほぼありません。ただ、雑誌に取り上げられたことで、多くの人がその商品を知ることにはなります。
このように、認知メディアを使うときには、掲載されたことを販促時の価値にするという視点が重要です。つまり、掲載したこと自体ではなくそれ自体を他に利用する「2次利用」という視点です。「この雑誌に掲載された商品」「青山の一等地にポップアップストアを出した商品」という付加価値がつくことで、消費者からの評価が一段階高くなります。
逆に、費用対効果を考えてしまうと、このような施策に対して実施しない方向に結論が向かいやすくなってしまいます。そのため、認知メディアへのコストは「回収できない投資」だと考えるくらいでちょうどいいと思ってください。
<売上を狙いにいく「刈り取りメディア」>
一方、刈り取りメディアは、そこから直接的に売りを狙うメディアです。オンラインメディアは総じて刈り取りメディアと言えます。認知メディアと刈り取りメディアは、どちらかだけを使うのではなく、複合的に使うことでより高い効果が見込めます。たとえば、Aというダイエット関連のサプリメントを売りたいと思ったとき、まずはターゲット層と読者層が一致している雑誌に商品を掲載します。
すると、ターゲット層への認知が高まるとともに、「この雑誌で掲載されていたAという商品」という認識で記憶されます。加えて、オンラインメディアで検索連動型広告を出して「ダイエット」「痩せる」などの検索ワードでAという商品が上位表示されるようにしておきます。
仮に「ダイエット」「痩せる」というワードで3つの広告が表示されたとしても、ほかの2つの商品が雑誌にも掲載されたことがなく、認知度が低い商品だったとしたら、「あの雑誌に掲載されたAという商品の方がよさそう」と消費者の目を引くことができ、選ぶ理由になるのです。
オンラインメディア広告ならではの注意点
オンラインメディアとオフラインメディアについて解説を進めました。ここで、オンラインメディアならではの注意点についても少し触れておきたいと思います。
<広告代理店の役割が変わってきている>
雑誌やテレビCMなどのオフラインメディアの場合、基本的に広告代理店が広告枠を持っているため、広告を出したいときには代理店から枠を買い取る必要があります。この買取額がかなり高額で、1,000万円以上することもあります。
しかし、ターゲティング設定ができるオンライン広告の場合は、広告枠を買い取る必要がありません。それに、広告主であるメーカーが代理店を通さずに、直接GoogleやYahoo!などに申し込んで広告を出すことが可能です。オフライン広告における広告代理店とオンライン広告における広告代理店とは、その役割が異なるのです。
ただ、広告主であるメーカーが直接広告を出稿できると言っても、出稿ができることと成約率の高い広告がつくれることとはまったく別の話です。やはり知識や経験がなければ難しいですし、広告の運用には手間もかかります。
そこで活用したいのが広告代理店です。代理店に依頼すれば、広告を出稿してくれたり、広告素材の作成や配信設定、ターゲティング設定などを広告主に代わってしてくれたりします。オンライン広告において広告代理店は、代理店というよりも運用代行会社という意味合いが強いのです。
<AIが広告を最適化してくれる>
デジタル広告では、ターゲティング設定機能を使って、狙ったターゲット層に広告を表示することができます。従来は、ターゲティング設定などの広告設定は人が手動でおこなっていましたが、こうした機能がどんどんAIによって自動化されてきています。しかも進化の速度が非常に速く、日々精度が高まっています。
たとえば、訴求力の高いコピーを考え出すのはとても大変なものですが、ユーザーが検索した語句を自動でコピーに挿入し、さらに改良を重ねて最適化してくれる機能も出てきています。「赤ちゃん敏感肌」という検索ワードで検索した人に対して、「赤ちゃんの敏感肌用のスキンケア」というコピーが表示されたら、おそらくクリックしてしまうはずです。
大枠の方向性を決めるところは人が最初にしておくべきですが、大枠なので難しくありません。ざっくりと方向性だけ決めて運用を開始すれば、あとはAIがテストを繰り返し、検証して最適化し続けてくれるのです。
おそらく今後、機械学習の精度はものすごい勢いで高まっていくはずです。近い将来、運用代行すら必要ない時代が来る可能性は、とても高いのではないかと私は予測しています。
<データは貴重な利益の源泉である>
オンライン広告のいいところは、リアルタイムに効果が計測できることです。たとえば、テレビCMの場合はどれくらい視聴されて、そのうちの何人が商品を購入したかということは計測できません。しかしオンライン広告では、リアルタイムで広告の効果を計測することができます。さらには、購入者の年齢層や性別などの属性まで把握できるのです。
管理画面の見方をマスターし、どのようなデータが計測できるのか、どのようにデータを分析すればいいのかを勉強すれば、管理画面からさまざまなことを知ることができます。
しかし、広告代理店に運用代行を依頼しているほとんどの広告主は、管理画面を自分たちで見ません。すべて代理店に任せきりにしてしまうのです。しかし、広告費を捻出しているのは当たり前ですが広告主であるメーカーです。広告費が適切に使われているのか、代理店がどのように広告費を使っているのかということは、しっかりチェックするべきです。
それに、運用を代理店に任せきりにしてしまうと、せっかくの顧客の情報をメーカーが活かすことができません。
管理画面を通じて得られるのは、顧客のニーズであり、声なのです。広告予算を無駄に垂れ流してしまわないためにも、代理店に任せきりにしない姿勢がとても重要です。
この記事の著者
- 山口尚大
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2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。
・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中
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