パートナー選びで結果は大きく変わる
1章で、化粧品や健康食品のEC・D2Cビジネスは少ない人数で億単位の売上をあげることができるとお伝えしました。それは、社内ですべての仕事をするのではなく、各プロセスにおいていろいろな外部のパートナーと連携することを前提にしています。
メーカーは社内だけでなく、社外のさまざまな専門家たちとチームを組んでEC・D2Cビジネスの運営に当たっていくのです。ここで提携する人たちのことを、ステークホルダーと呼んでいます。
共にEC・D2Cビジネスを運営していくステークホルダーにはどのような専門家がいるのか、もう一度おさらいしておきます。
広告運用代行会社(広告代理店)
広告運用をインハウスでおこなわない場合には、広告運用代行会社にその業務を依頼することになります。制作会社顧客にとって使い勝手のよいUIやUXをつくる上で、制作会社の存在は重要です。また自分たちの求める売上に向けてLPテストを繰り返す必要があるため、対応力やスピードも大切です。
ツールベンダー(開発会社)
ECサイトに欠かせないショッピングカート機能や売上をあげるための各種マーケティングツールの導入にあたり、ツールベンダーの存在は欠かせません。
パートナーの力を最大限に引き出すには
ステークホルダーに最大限の力を発揮してもらうことが、EC・D2Cを成功に導くポイントです。ここで念頭に置いておいていただきたいのは、皆自分の利益が最優先だということです。
シビアな話になりますが、広告運用代行会社はメーカーのビジネスの成功よりも、自社の利益が最優先です。それは制作会社も、ツールベンダーも同じこと。ビジネスの成功を真剣に考えて成果を出そうとしているのはメーカーだけだという認識を、忘れてはいけません。
その上で、ステークホルダーに最大限の力を発揮してもらうためには、どのようなことに心がければよいのでしょうか?
担当者に高いレベルを求める
制作会社やツールベンダーがどんなに業績がよく、会社として成果を上げていたとしても、担当者による部分が大きいのは事実です。10年間その道で仕事を続けてきた人と、未経験で入社してまだ数カ月という新人とでは、出せる成果に大きな差があります。仮に新人が担当者に就いた場合、慎重に実力を見極めましょう。
新人担当者の場合、何か失敗したとしても、あまり強く咎められないと感じる人もいるかもしれません。「まだ新人だから、失敗しても仕方ない」「成果が出なくても、長い目で見守るしかない」など、つい自分が新人だった頃のことを思い出して甘い評価になってしまうかもしれません。
しかし、しっかり成果を出していきたいのなら、そこはシビアに求めるものをリクエストしていく姿勢が重要です。
パートナーと同等の知識を持つ
たとえばECサイトでチャットボットを使いたいと思ったとき、チャットボットのツールベンダーに相談してどのような機能を搭載するかを話し合っていくことになります。このとき、メーカー側にチャットボットについての知識がまったくないと、ベンダーの言いなりにならざるを得ません。
たとえば、ベンダーから2つの機能を提案されたとき、知識がなければ比較検討することができません。そして結局は、「ベンダーさんが勧めるのなら……」といって選ぶしかなくなりますが、そうなると当然足下を見られます。
冒頭でも話した通り、誰しも自社の利益が最優先です。もちろん中には、メーカーにとって最善のものを提案してくれるステークホルダーもいます。しかし、ステークホルダー側にしてみれば、まったく知識がない、知識を入れようともしない、ただ「お任せで」といって丸投げしてくるメーカーに対しては、なかなか本気で向き合えないことも事実です。
「ここまで真剣に勉強されているのだから、こちらも最大限のサポートをしよう」とステークホルダーに思わせるためにも、同等の知識を持つことは重要です。
うるさい客になる
仕事を丸投げすると、よい成果物は上がってきません。それに基本的に担当者は複数の顧客を抱えているため、常に多忙です。何も要求しない大人しい顧客は担当者にとってはありがたいものですが、忙しいためにどんどん後回しにされてしまいます。
そうならないためにも、常にうるさいくらいに連絡を取り、進捗を確認することも重要なポイントです。