文字のない複数の化粧品容器
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D2Cの市場・競合分析では顧客が商品を知ってから比較し、購入して使い続けるまでの条件を調べます。競合の商品と価格に加えて購入後の体験や代替行動も比較し、自社が選ばれる理由と再購入につながる条件を整理します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

市場と競合を分析する

MVVを自分の中から掘り出したら、次は市場と競合を分析します。市場規模や競合の数に加えて、自分のブランドがどこで勝てるかを判断するための条件を調べていきます。

市場を顧客のかたまりで分ける

市場の中身は複数のかたまりでできています。化粧品や健康食品という大きなカテゴリーのままでは、誰と比べられ、どこで選ばれるのかが分かりません。まずチャネルや価格帯、カテゴリーで市場を分けます。

次は顧客の分類です。地域や年齢といった属性に加えて、何を大切にしてどこで探し、どう買うのかという心理と行動まで含めて分けます。同じ美容液でも百貨店のカウンターで選ぶ人とSNS広告から入る人では、比べる相手も選ぶ理由も違います。

分析は外と内の両方から進めます。顧客が何を欲しているのかという外からの見方と、自社が何を持っているのかという内からの見方です。外だけに目を向けると自社で作れないものを追いかけ、内だけに目を向けると誰も欲しがらないものを磨いてしまいます。両方を重ねて初めて、狙うかたまりの候補が出てきます。

SWOTで他社にできないことを見つける

自社の強みと弱み、市場の機会と脅威を4つの枠に書き出すのがSWOT分析です。ここで探すのは、自社の強みと市場の機会が重なり、しかも他社にはできないことです。その重なりが見つかれば、ポジショニングもほぼ決まります。強みを社内の思い込みで埋めず、口コミサイトやQ & Aサイトで顧客の本音を調べてください。自社と競合が実際にどう語られているかを確認してから書きます。

既存資産の中にD2Cの種がある

既存事業で蓄積される資産は、ノウハウやネットワーク、顧客基盤だけではありません。営業、接客、問い合わせ対応を通じて聞いてきた顧客の悩みも資産になります。現在の商品やサービスでは応えられなかった悩みの中に、新しいD2C事業の種があります。

たとえば介護事業者は日々の介助を通じて利用者や家族から食事や肌の悩みを聞いています。繰り返し出てくる悩みがあれば、それに応える商品を販売できないかと考えるのです。本業とは異なる分野の商品でも顧客と課題が見えていれば下地はすでにあります。

聞いた声を商品化の判断につなげるには、さらに顧客へのインタビューが必要です。本当にお金を払ってでも解決したい悩みなのかを確認してください。

空白を埋めるか、上位を取りに行くか

分けた市場と競合の位置をポジショニングマップに並べると、進み方が分かれます。誰もいない空白を埋めに行くのか。すでにプレイヤーがいる場所の上位を取りに行くのか。

空白を埋めるなら、そこに顧客が本当にいるのかを先に確認します。誰もいないのは誰も欲しがらないからかもしれません。一方で上位を取りに行くには正面から比較される前提で、選ばれる理由と資金の両方が必要です。どちらを選ぶかによって商品も価格も広告も変わるため、ここで絞ったかたまりと立ち位置がペルソナの母体になります。

差別化できているつもりの罠

ポジショニングで最も多い失敗は「差別化できているつもりが、顧客から見ると差別化されていない」ことです。「天然成分100%」「添加物不使用」「国内製造」と掲げても、同じことを言うブランドが増えれば「みんな言っている」と受け取られます。差別化につながるのは「自社にしか言えないこと」か「誰も言っていないこと」です。

「自社にしか言えないこと」には実績や数値、独自処方や特許といった事実の裏付けが必要です。「構想から開発まで5年かかったレシピ」「自社農園で育てた原料」などが当たります。ここでいう「言えない」は薬機法の制約とは別で、事実として裏付けられるかという話です。「誰も言っていないこと」は、市場が見落としているニーズへの応答です。競合が「効果」を訴求している中で「使い心地」に徹する。「若年層向け」が多い中で「50代以降」に特化する。こうした違いも選ばれる理由になります。

確認の実務として、主要競合5社のLPのメインコピーを並べて読みます。全部が似ていれば差別化の余地があり、各社が明確に違えば空いている場所を探します。

言い切ってしまえば、比較される時点で負けています。ポジショニングとは競合より優れていることを示す作業と別物で、比較される土俵そのものから降りるための設計です。

成分と価格と容量という共通のものさしで並べられると差は埋もれます。強いブランドが提示するのは自分に有利な新しい評価軸です。何を基準に選ぶべきかを再定義できれば、その瞬間に比較の構図から抜けられます。買う人に新しいものさしを渡すことが差別化の核心です。

競合調査は顧客が選ぶまでの条件を比較する

白い背景の小さな買い物カート

自社のポジションを決めるには、顧客が競合を選ぶ理由まで調べる必要があります。商品名や価格、成分や広告コピーを並べるだけでは分からない部分です。顧客は何をきっかけに商品を知り、どこで不安を解消して購入したのか。届いた後はどう使い続けているのか。LPのメインコピーを比べたら、顧客が選ぶまでの条件にも目を向けてください。

そのうえで、直接競合と代替行動を分けて考えてみてください。直接競合は、同じ顧客の同じ場面で選ばれる商品です。代替行動は、別カテゴリーの商品、店舗での施術、医療機関への相談、何もしないことまで含みます。顧客は企業が定めたカテゴリーの中だけで比較していません。

調査する商品は実際に購入してください。購入から到着までの日数や梱包、同梱物、初回の説明、定期条件、問い合わせ対応、次回案内は、広告とLPを見るだけでは分かりません。購入前の約束と購入後の体験が一致しているかを確認するためです。優れた点を真似る前に、その会社の顧客にはなぜ機能するのかを考えてください。

比較表には、対象顧客の生活場面、商品が約束する変化、その根拠、価格、使うときの手間、購入条件、信頼を作る接点、継続の理由を入れます。すべての項目を埋める必要はありません。分からないことは分からないと記し、広告からの推測と確認できた事実を分けます。

競合にない要素を見つけても差別化が成立するとは限りません。顧客にとって重要でない違いを作れば、説明するコストが増えるだけです。確認するのは、対象顧客が選ぶ場面で本当に意味があるのか、それを商品と運用で守り表現し続けられるかです。

競合の価格が低いとき、すぐにその水準に合わせてはいけません。内容量、使用頻度、配送、初回と2回目以降の条件、品質の根拠、無料相談などのサポートの有無をそろえて比較します。表示価格が安くても、使い切るまでの費用や継続条件が違う場合もあります。なぜその価格差になっているのかを説明できないなら、値下げの前に商品の役割と対象顧客を見直します。

競合調査では真似すべきものと真似してはいけないものを分けます。真似すべきは顧客の購入理由の共通パターンです。上位レビューや口コミに繰り返し出る言葉(「使い心地がなめらか」「続けやすいサイズ」)は訴求設計に直接使えます。真似してはいけないのは競合のポジショニングと文脈です。競合が「成分の透明性」を売りにしているなら、同じ土俵では後追いになります。

最も詳しく調べるべきは競合のネガティブレビューです。「ここが不満」「やめた理由」の中に、自分が解決できる問題が潜みます。競合調査は一度で終えず、半年から1年に一度更新します。

価格感度と再購入の理由から設計を逆算する

市場を分析するときに欠かせない視点が、対象顧客の価格感度です。同じ「スキンケアに関心がある30代女性」でも、デパートコスメの常用層とドラッグストア層では高い安いの感覚が根本から違います。3,000円のクリームを安いと感じる人と高いと感じる人が、同じターゲット定義の中に混在します。

価格感度を把握する方法はシンプルです。普段どこで何を買っているかを手がかりに、納得して支払える価格の上限を推測してください。競合5社の価格分布も市場で一般的な価格帯を知る材料になります。3,000〜5,000円に集中しているなら、7,000円以上のプレミアム帯が空いている可能性があります。

低価格帯が空いている場合は、そこで事業を成立させられるかを慎重に確認してください。誰もビジネスとして成立させられなかったために、空いていることも多いからです。広告で新規顧客を獲得するD2Cには、CPOを回収できる単価と継続購入が必要です。基本的には中価格帯以上での価格設定が事業の成立条件になります。

最後に考えるのは「この顧客はなぜ同じ商品を買い続けるのか」です。初回は気になったから、安かったからという理由でも購入します。再購入につながるのは、使って良かったという体験です。機能に納得できるか。使い続けやすいか。価格と効果のバランスが取れているかまで確認してください。

その先で最も長く成果を支えるのは、このブランドであることへの愛着です。同等品が他にあってもこのブランドから買いたいという状態を作れば、競合の参入や価格競争に動じない顧客基盤になります。市場調査の目的は、初回のきっかけに加えて再購入の理由と愛着を生む条件を理解することにあります。

失敗するブランドの型

MVVとペルソナが定まっていないブランドは、だいたい次のどれかに当てはまります。

  1. 流行の成分に頼る
  2. 誰にでも売ろうとする
  3. 言うことが毎回変わる

流行の成分に頼るブランドは、話題の成分をいち早く取り入れて看板にします。ブームの間は成長しても、ブームが去ると顧客も離れていきます。顧客が関心を持っていたのは、そのブランドよりも流行の成分だったからです。

誰にでも売ろうとするブランドは、訴求が広がりすぎて誰の心にも残らず、広告のターゲティングも曖昧になって費用が分散します。「誰でも使える」は裏返すと「誰の特別にもなれない」ということです。

言うことが毎回変わるブランドは、担当者が変わるたびにトーンが変わり、広告とLPの雰囲気が違います。よく見るブランドにはなれても好きなブランドにはなれません。好きになることが、価格競争を超えた選択理由を生みます。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』第2章p.37〜42を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
化粧品・健康食品D2Cは競争が激しく、正しい戦略や事例に学ぶことが成果を左右します。私たちが支援した150社の事例と最新の戦略をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。→今すぐ無料で入手する

山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』