2026年8月5日に消費者庁が22問のQ&Aを出した
機能性表示食品のGMPが2026年9月1日に完全施行されます。その3週間前にあたる8月5日に消費者庁は説明会のQ&Aを全22問で公表しました。締切の直前に22問も出るということはそれだけ現場から質問が集まったという意味です。
同じ8月5日付の届出データベースでは撤回が25件出ています。うち14件は同じ会社の同じシリーズの製品でした。事由はいずれも「販売予定がないため」です。施行の締切が近づいたことで動いていない届出を整理する動きが始まっています。
届出の書類づくりは専門の代行会社が担う領域です。この記事ではその前後で事業側がやるべきことを整理しています。
同じヘルスクレームに1,400件が並んでいる
この制度が施行されたのは2015年4月。10年で届出は9,912件に達しました(2025年7月時点)。
機能性関与成分で数えるとGABAが1,428件で最多。次いで乳酸菌651件、難消化性デキストリン531件と続きます。訴求の内容で数えると疲労感1,459件、中性脂肪1,453件、血糖値1,443件、BMI1,308件と並びます。
この数字が示しているのは、同じ成分と同じ訴求に届出が積み上がっているという事実です。
20年この業界を見てきた経験でお話すると、ゼロから新規の研究を行い、新しい機能性の届け出を実施する会社に出会ったことはほとんどありません。自社で臨床試験を組み、査読を通し、新しいヘルスクレームを立てる。ここまでやるには時間も費用も桁が変わります。体力のある大手企業だけがチャレンジできる方法です。
実際に選ばれているのは、すでに論文のある成分を使って先行と同じヘルスクレームで届出を出す進め方です。手順も最短で費用もある程度想定可能の範囲です。そのかわり成分も訴求も似たような商品が並びます。GABAの1,428件と疲労感の1,459件はこうして積み上がった数字です。
市場に参入する際に検討すべき共通の前提が、この機能性表示になりました。取ったこと自体が優位性として働く時期は終わっています。差がつくのは届け出を取ったあとの設計です。誰に向けて何を約束するのか。買った人にどう続けてもらうのか。この2つは制度の外側にある話で届出の代行では埋まりません。
この前提を置いたうえで制度の要件を順に見ていきます。
届出は事業者が自社の責任において申告するもの
届出とは、事業者が自らの責任で科学的根拠を示して消費者庁に提出する手続きです。国が審査して許可を出す特定保健用食品(トクホ)とは仕組みが違います。届出が受理された後も機能性と安全性の説明責任は事業者に残ります。責任の所在が事業者にあることがこの制度の出発点です。
この違いは現場に直結します。トクホは審査に年単位の時間と数千万円規模の費用がかかります。一方の届出は、要件を満たせば60日で販売までたどり着けます。参入の速さが最大の利点で、健康食品市場の商品数がこの10年で急増したのはこの制度によるものです。
ただし2024年以降は制度が明確に厳格化の方向へ動きました。あの紅麹事件がきっかけです。つまり届出さえ通れば終わりという時期は終わりました。
届け出するのに何を用意するのか
届出資料の中心は次の4つです。
1. 安全性の根拠をどう示すか
喫食実績、既存情報による安全性評価、安全性試験のいずれかで示します。既存情報での評価が最も一般的です。医薬品との相互作用の確認も必要になります。
2. 機能性の根拠をどう取るか
最終製品による臨床試験か機能性関与成分に関する研究レビュー(システマティックレビュー)のいずれかが必要です。研究レビューが大半を占め、表示しようとする機能がその根拠の範囲内にあることが要件です。
3. 生産と製造と品質をどう管理するか
2026年9月1日からこの管理体制の要件が大きく変わります。くわしくは後ろのGMPの節で書きます。
4. 健康被害の情報をどう集めるか
2024年9月1日から義務になりました。こちらも後述するトピックスで詳しく解説しています。
作成した届出資料は消費者庁のデータベースで公開されます。競合も同業も読むという前提で作る必要があります。逆に言えば参入を検討している成分については先行他社の届出資料を読めば根拠の取り方がそのまま分かります。届出の前に必ず見ておく場所です。
2024年9月から義務になった健康被害の報告
紅麹関連製品による健康被害を受けて策定された制度改正です。医師の診断さえあれば、製品との因果関係が不明な事例でも報告する義務ができました。
報告の期限は症状の重さで分かれます。重篤な健康被害は15日以内に報告、重篤でない場合でも同一症例が2件以上続いたときは30日以内に報告が必要です。報告先は所管の保健所と消費者庁となります。
実務で用意するものは3つです。消費者からの申し出を記録する仕組みと医師や医療機関への確認の手順と症状や使用期間や製造ロット番号を残す様式です。コールセンターを外部に委託している場合は委託先との情報連携の設計まで含めて考えます。この体制は受注の電話を受ける現場に直結するため社内の通販部門だけで完結しません。
義務に違反すると食品表示法に基づく指示や命令の対象になります。営業の禁止や停止に至ることもあります。
2026年9月1日にGMPが完全施行される
改正されたGMP告示の完全施行は2026年9月1日。対象は天然由来の抽出物や化学的合成品を原材料とする錠剤とカプセルと粉末と液剤で、いわゆるサプリメント形状のものが該当します。グミのように風味を楽しむ加工食品は現時点で対象の外にありますが今後の議論しだいで変わる可能性があります。
8月5日のQ&Aで示された論点のうち現場で覚えておくべきことが2つあります。
1つは機能性関与成分を含む原材料の同等性と均一性をロットごとに確認する必要がある点です。原料の仕入れが複数のロットにまたがる運用をしている場合は確認の頻度と記録の様式を見直すことになります。
もう1つは海外の工場に製造を委託している場合の確認方法です。国内の工場なら現地に立ち入って確かめられます。海外の工場には同じように立ち入れません。この場合は届出者への聞き取りで確認する形が認められました。海外のOEM会社を使っていること自体が届出の妨げになるわけではありません。
求められるのはGMP告示の基準を満たすことであって、認証マークを取ることが条件になったわけではありません。ただし委託先の工場が基準を満たしているかを自社で一から確かめるのは現実的ではありません。認証を取得済みの工場を選べば、その確認を省けます。だから実務では「認証を持っている委託先を選ぶ」が最短になります。自社に工場を持たない事業者にとって、GMPの義務化はOEM先を選ぶ基準が1つ増えたことを意味します。
すでに販売中の製品も対象となります。委託先がこの要件を満たしていない場合、製造の切り替えに処方の再現性の確認と安定性のデータ取得が必要です。その以降の準備は数か月では終わりません。9月に間に合わない見込みであれば一旦販売を止める判断を先にする必要があります。
自己点検の報告は期日を1日でも過ぎたらアウト
届出者は製造や品質の管理の状況を自ら点検して年に1回消費者庁に報告します。見落としやすい点が2つあります。
休止中の届出も実績ゼロの届出も対象です。商品を販売していない期間であっても報告の義務があります。
期日の超過は一切認められません。報告期限を過ぎた商品は機能性表示食品として販売ができなくなります。届出番号を取り直すには新規で届出を出し直すことになり、研究レビューの再提出まで含めて数か月と費用がかかってしまいます。
次回の期限は、前回いつ報告したかで決まります。前回報告した月の翌月1日から数えて1年後が次の期限です。2026年3月に報告したなら、次は2027年3月31日までになります。
1回目は届出番号が付いた日から1年以内です(2025年4月1日以降に番号が付いたものが対象)。届出ごとに番号が付いた月が違うため、期限も1本ずつずれていきます。届出が10本あれば期限も10通りです。一覧にして管理する必要があるのはこのためです。
このルールは事故を引き起こしやすい形をしています。なぜなら届出は商品開発の担当が責任をもって出しますが、その後の運用は誰の担当でもないまま宙ぶらりんになっていることが多いためです。届出ごとの期日を一覧にし、この運用の担当者を1人決めてしまうことが重要です。あわせて販売を休止している商品の届出を続けるか、撤回するかを9月までに判断します。冒頭の撤回25件はその判断を行った末の動きと考えられます。
表示のルールも2025年4月1日以降で変わりました。特定保健用食品ではない旨を表示するなどパッケージの表記に追加の要件が入りました。在庫のパッケージを抱えている場合は、その切り替えのスケジュールも考えておく必要が出てきます。
中小の現場がやるべきことはこの4つ
ここまでの制度の話を元に現場がやるべきことを整理すると次の4つになります。届出書類の準備は代行会社が行うとして事業社側がやるべき仕事です。
1. 届出の棚卸しをする
持っている届出を売っているものと売っていないものに分けます。売っていないものは撤回するかいつ売るかを決めます。実績ゼロでも休止中でも年に1回の報告対象になるため放置が最も高くつきます。届出データベースで撤回が続いているのはこの整理が始まったからです。
2. 年次報告の担当者を決める
届出は商品開発の担当が出すことが多いです。その人が異動や退職でいなくなると期日を知っている人がいない状態になります。届出ごとの期日と担当者を一覧にしてカレンダーに乗せるところまでで防げます。
3. OEM会社には必ず製造要件をヒアリングする
GMPは実務としては製造側の機能です。ただし責任は届出者に残り年に1回の報告項目にも生産と製造と品質の管理が入ります。つまり受託先の状況を確認して自社の名前で報告する形になります。
やることは1つです。「2026年9月1日以降のGMP要件を満たしていますか」と聞いて回答を文書でもらっておく。満たしていればあとは受託先の仕事になります。小規模な受託先や海外委託を使っている場合はここで止まることがあり切り替えには処方の再現性と安定性の確認で数か月かかります。
4. 届け出の前に売れる設計を決める
既存の論文に相乗りする以上は届出が通ります。通ったうえで同じような商品が並びます。誰にいくらで売るのか。どう続けてもらうのか。この2つを決めてから届出に進む順序にすれば在庫と管理コストだけが残る事態を避けられます。
中小にとっての本質は機能性表示が差別化の手段から維持コストのかかる前提に変わったことです。取る判断はその年間コストを払ってでもこの商品を出す必要があるかで決めます。
ではどこで差をつけるのか
同じ成分と同じヘルスクレームの商品が溢れている前提で考えると、消費者にその商品がなぜ選ばれるのか、その理由をつくることがいかに大切かがわかります。日々、相談をお受けする中で実際の成果に差が出てくると感じるのは次の4つの要素です。
1. 誰に向けた商品なのか、ターゲットを狭くする
同じ「疲労感」でも誰のどんな場面の疲労かまで絞れば訴求が変わります。届出表示は同じままで構いません。同じ訴求の商品が1,459件並んでいても名指しされた人には別の商品に見えます。
2. 買ったあとの続け方まで設計する
飲むタイミングと切らさない仕組みと同梱物。買ったあとの体験は届出の対象の外にあってそのぶん自由に作れます。継続率は損益に直結します。
3. 定期購入への導線を正しく作る
国民生活センターの集計では2025年度の消費生活相談100万6000件のうち、定期購入に関するクレームが約9万8000件と2位の件数を占めました。一方で化粧品D2Cのシロル社は売上の8割超を自社ECの定期購入が占めながら24時間の解約対応を含む体制を整えています(日本ネット経済新聞・2026年8月6日)。解約のしやすさと高い定期比率は両立します。
4. 誰が言っているかで選ばれる状態をつくる
同じ成分を使っている以上、成分の説明で差はつきません。最後に残るのは、それを誰が言っているかです。
開発した人が表に出て考え方を語る。書籍や連載や取材の実績がある。問い合わせへの返信が速い。こうした積み重ねが「この会社が言うなら」という判断につながります。成分表は真似できても、積み上げた時間は真似できません。
届け出に進む前に事業として決めておくこと
事業として見ると届出の前に決めておくべきことが3つあります。
その機能性で売れるのか
研究レビューが取れる成分と消費者が価値を感じる成分は必ずしも一致しません。届出が通る機能性の文言は想像よりも地味になります。「おなかの調子を整える」という表現で何人が買うのかを届出の前に見積もっておきます。
広告で何が言えるのか
届出表示の範囲を超えた訴求は景品表示法と健康増進法の問題になります。届出の文言が決まった時点で広告で使える言葉の上限も決まります。
この点は相談を受けていて最も反応が分かれるところです。以前、自院向けにサプリメントを開発した医師の方から通販の相談を受けたことがあります。診察室では「これを飲めば肌のハリにもいいですよ」と説明できていたものが広告になると同じ言い方ができません。話をすると「広告では何も言えないんですね」と驚かれました。製品の開発と広告表現の設計を別々の時間軸で進めるとこの形になります。詳しくはサプリメントの広告で言えることと言えないことに書きました。
開発費用は何年で回収できるのか
研究レビューの委託費と臨床試験の費用とGMP対応した製造委託先の単価はいずれも初期の原価に乗ります。定期購入の継続率と1人あたりの生涯価値から逆算して初回の獲得単価の上限を決めておきます。
定期購入そのものにも監視の目が向いています。届出の要件を満たすことと申込画面の総額と回数と解約方法の表示を整えることは別々に手当てが要ります。
いま何から手を付けるか
機能性表示食品の届出は事業者が責任を持つ制度です。2024年9月に健康被害の報告が義務になり2026年9月1日にGMPが完全施行されます。届出後も年に1回の自己点検と報告が続いてその期日には猶予がありません。
いま手を付ける順番はこうです。届出を棚卸しして売っていないものの扱いを決める。年次報告の期日と担当者を一覧にする。受託先にGMPの対応状況を確認して回答をもらう。そのうえで新しい届出については誰にいくらで売るのかを決めてから動きます。
制度を通すことと事業が回ることは別の問題です。届出の代行は通すところまでを担ってその先の設計は事業側が持ちます。
9,912件のうち同じヘルスクレームで1,400件が並ぶ市場です。届出を取ることは前提の確保にあたります。売れるかどうかはそこから先の設計で決まります。
クリームチームマーケティングは化粧品と健康食品のD2Cに20年関わり150社250ブランドの立ち上げと立て直しを見てきました。届出の可否に加えてその成分と価格と訴求で事業が回るかまで含めて相談に乗ります。健康食品・サプリD2Cコンサルティングのページもあわせてご覧ください。
出典
- 消費者庁「機能性表示食品制度に関する説明会」Q&A(2026年8月5日公表・全22問)
- 消費者庁 機能性表示食品の届出情報検索(撤回件数は2026年8月5日付)
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」(2025年10月1日版・自己点検等報告の期限)
- 国民生活センター 2025年度の消費生活相談の概況
- 株式会社UOC 機能性表示食品の人気成分とヘルスクレーム一覧(2025年7月23日時点・届出A1〜J1584の9,912件を集計)
- 消費者庁 機能性表示食品を巡る事務手続き等に関する検討会 取りまとめ(GMP告示の改正)
この記事の著者

- 化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
-
著書2冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中
・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・3冊目の書籍『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』(仮)を執筆中
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