他社の製品との差別化を考え、これまでに無いような新規成分を用いた健康食品を開発するケースがあります。例えば、「ビタミン X」という成分を発見したとします。これを一定量摂取すると、体内の成分 Y の値が改善し、疲労回復に効果的だとします。
こんな成分を使ったものは今までどこも製品化していません。さあ、たくさんの人に利用してもらうべく広告を出そう、となったとき、問題が起こってきます。その「ビタミン X」の効果はどのように伝えるのでしょうか。
先ほどお伝えしたように、効果・効能を謳った広告は厳しく規制されています。そのため、新規成分を使った製品の魅力を伝えることができないのです。ビタミン C など有名な成分であれば、「肌に効果がある」「風邪の予防に効く」など、効果を消費者側がある程度認知しています。しかし新しい成分である「ビタミン X」になると、その働きや効果を消費者が知識として持っていないため、それを使った健康食品が自分に必要あるものなのかがわかりません。
つまり、製品としては画期的でも、その魅力を伝え表現する方法がないと売ることができないのです。この問題に対し、消費者に新しい成分の知識を持ってもらうための啓蒙から行っているケースをご紹介します。
アサヒカルピスウェルネス株式会社では、「L-92 乳酸菌」や「C-23 ガセリ菌」などを使った健康食品を販売しています。これらの成分は、消費者にとってはあまり耳馴染みがないものではないでしょうか。そこで、彼らは、そういった成分について詳細に説明するための、「『カルピス』由来健康情報室」というウェブサイトを作り、そのサイトの広告に力を入れるという方策をとりました。
つまり、商品紹介をせずに、成分知識だけを広める啓蒙のための広告を作っているのです。例えば「乳酸菌」についてはほとんどの消費者が「腸に良い効果をもたらす」「便通がよくなる」など、一定の知識を持っていると思いますが、これが L-92 乳酸菌となるとどうでしょう。これまで知られていた乳酸菌と何が違うのか、その違いを把握している人はほとんどいません。そこで、「L-92 乳酸菌とは何なのか」というページを作り、このページ自体を広告の流入先としたのです。
そこには商品の紹介は一切なく、「L-92 乳酸菌がどういう菌であるか」ということや「アレルギーやアトピーに効果的」「花粉症にも良い」という内容を、科学的に説明しています。あくまで成分の知識を広く顧客に浸透させるためといった立ち位置の広告のため、商品販売のための法令の規制を受けることはありません。
もし誰も認知していない新しい成分が含まれた商品を販売するのであれば、まずはこのように成分知識を啓蒙するような段階的なアプローチを取る方法が最も効果的だと言えます。特にサプリメントに関しては、科学的な検証結果やエビデンスなど、伝えたいメーカーの想いはたくさんあると思います。その想いを伝えるのであれば、現状ではこのように「認知→販売」というステップを踏んでから購入させるアプローチをおすすめします。こういった方法をとると、「成分認知」という直接的にはお金を生まない部分に、広告費やランディングページの制作費などコストをかける必要が出てきます。しかし、それこそが自らのポジションを確立し、継続的な売上をあげるための一番の近道になると私は考えています。