机の上に置かれた電卓と資料
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D2Cの事業計画ではLTVとCPOと原価率に加え、在庫リスクと運転資金の前提を確認します。発売前に数字を仮決めして矛盾を見つけ、売上が立つまでに先に出ていく資金を準備する考え方を説明します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

フェーズ1 事業計画 「決める」ことの本当の意味

ここで言う事業計画はMVVとペルソナと市場での立ち位置を基に、ビジネスの目標と確保できる資金を数字にする作業です。銀行提出用の書類を作るだけではありません。大切なのは「決める」ことです。考えたり検討したりする段階から一歩進んで、事業の前提を決めます。

事業計画の段階で「そこはまだわからない」「数字までは想像がつかない」「そのあたりはお任せします」と決定を避けると、その後のすべてのフェーズで未決定が連鎖します。私はこう伝えます。「仮でいいので決めてください。間違えていたら後で直します。でも決めなければ前に進めません」。仮決めは判断から逃げることではありません。「このベースで動く」と自分で引き受けることです。

事業計画の本当の目的は「前提の確認」です。事業計画を作る過程で「製造原価が想定より高く、現在の価格では広告費を回収できない」「必要な広告費が調達可能な資金の倍以上だ」といった問題を、始める前に発見できます。特に確認すべき前提は、LTV、CPO、原価率、在庫リスク、運転資金です。まずこれらが互いに整合しているかを確かめます。

オファーと商品は連動させて考える必要があります。「3回継続が前提のオファー」なら、3回使い切って効果を実感できる商品設計が必要です。両方が連動していなければ顧客体験はちぐはぐになります。

実務の要点|これらの前提は仮でも、数字を決めるから矛盾に気づけます。LTVやCPO、原価率、在庫、運転資金を決めずに進むと、数字の整合性を確認すること自体ができません。計画の役割は正確な予測より、始める前に矛盾を見つけることにあります。

LTVとCPOと原価率と在庫リスクと運転資金の確認内容を示す書籍の表
事業計画で確認する5つの前提
5つの前提をテキストで読む
①LTV
確認内容:継続率と平均継続期間。満たさないと:CPOの許容値が狂う。
②CPO
確認内容:広告費÷新規顧客数。満たさないと:高すぎると回収不能。
③原価率
確認内容:製造原価÷販売価格。満たさないと:高すぎると広告費の余地なし。
④在庫リスク
確認内容:初回ロット数・売れ残りの処理。満たさないと:資金が在庫で塩漬け。
⑤運転資金
確認内容:入金までのタイムラグを埋める資金。満たさないと:黒字でも資金ショート。

私の現場から:飛び立つ前に、燃料は足りているか

私が関わった案件で、今も悔いが残っているものがあります。経営者は1年近くをかけて入念に準備していました。処方にこだわり、世界観を練り、パッケージにも妥協がありませんでした。商品そのものは決して悪くありませんでした。それでも離陸して半年で燃料が尽きました。

当時、私たちは「売れるかどうか」を一番の論点にしていました。しかし本当の問題は、その手前にありました。D2Cは、在庫を仕入れ、広告を出してから売上が立つビジネスです。つまりお金は必ず先に出ていきます。商品が良かろうと悪かろうと、入金より支払いが先に来ます。これはビジネスモデルそのものの性質であって、努力ではひっくり返せません。

この構造を前提にすると商品より先に設計すべきなのは資金繰りです。商品と広告を具体化する前に確認することがあります。黒字化までに何か月赤字が続くのか。その間に在庫と広告でいくら先に出ていくのか。その「出ていく総額」をどう準備するのか。融資と自己資金と出資のどれを使うかまで先に組んでおかなければ、売れ始める前にキャッシュが尽きます。

あの撤退の原因は販売不振より手前にありました。事業が軌道に乗る前に燃料タンクが空になりました。資金の設計そのものが抜けていたのです。

飛行機にたとえれば燃料の積み忘れです。航続距離を語る前に、そもそもタンクの設計をしていませんでした。この経験以来、私は立ち上げの相談を受けると、商品の話より先にこう聞くようになりました。「黒字化まで、何か月分の資金を準備していますか」。これに即答できないうちは、まだ飛び立ってはいけません。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』第3章p.54〜56を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
化粧品・健康食品D2Cは競争が激しく、正しい戦略や事例に学ぶことが成果を左右します。私たちが支援した150社の事例と最新の戦略をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。→今すぐ無料で入手する

山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』