ノートに言葉を書き出す手元
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D2CのキャッチコピーはMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と顧客が日常で使う言葉から作ります。広告やLPから購入後のメールまで言葉を揃える方法と、レビューや問い合わせからコピーを磨く手順を解説します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

MVVとペルソナからコピーを作る

キャッチコピーの出発点もMVVとペルソナです。創業者がブランドを始めた理由から中心になる言葉を拾い、対象顧客が日常で使う言葉を集めます。譲らないことから約束できる範囲を決めたら、候補が誰に何をどこまで約束しているかを確認します。優先するのは言葉の強さよりも、顧客が生活のどの場面でその商品を使うかが伝わることです。

広告、SNS、メール、LP、問い合わせ対応、同梱物の声も一貫しているか確認します。使わない言葉、よく使う言葉、専門用語の説明方法、数値の扱い、写真の使い方を1〜2ページのドキュメントにまとめておきます。媒体ごとに表現が変わっても、同じブランドが同じ顧客へ話していると分かる状態を作ることが重要です。

ブランドボイスを接点ごとにぶらさない

ブランドボイスはブランドの価値観と世界観を言葉に表したものです。使わない言葉と約束することも含み、MVVとペルソナを顧客が接する言葉へ移す役割を持ちます。媒体に合わせて文の長さや専門用語の量を変えても、同じブランドだと分かる人格は変えません。

失敗に共通するのは、接点が変わるたびに別人が語っているような言葉遣いになることです。

ブランドボイスは、広告、LP、パッケージ、メールなど、顧客と接するどの場面でも固定します。トーン(丁寧さ、文の長さ、専門用語の密度、絵文字の可否)は媒体ごとに調整して構いません。同じ人でも講演と友人との会話では話し方が違いますが、「同じ人だ」とは分かります。それがトーンの調整です。一方でメディアでは学者、SNSでは若者、パッケージでは別人のように人格ごと入れ替わるブランドがあります。

消費者はSNSでブランドを知ってLPで検討します。商品が届いたらパッケージを開けてフォローメールを受け取ります。そのたびに「別のブランドと話している感覚」になれば信頼は積み上がりません。媒体に合わせてトーンを変えても、ボイスという人格は保つ必要があります。

私が特に重視するのは「書かない言葉を決めること」です。使う言葉より、使わない言葉・文体を決めるほうが、その輪郭は明確になります。「〇〇革命や驚異の成分といった語は使わない」「感嘆符は使わない」「上から教える文体は使わない」。

こうした「書かないこと」のリストがあれば、担当者や代理店が変わっても言語を引き継げます。言語が安定したブランドに向けられるのは「なんか雰囲気があるよね」という感想です。言語に設計がなければ広告費をかけても「見た気がするけど、どんなブランドかわからない」で終わってしまいます。

実務の要点|使う言葉より先に、「使わない言葉」を決めます。書かないことのリストが、ブランドの輪郭を作ります。

実例:MVVからキャッチコピーを生む

横浜のスタートアップでスキンケアブランドのキャッチコピーを作りました。対象は35〜45歳の女性で、使うアイテムを最小限にすることをコンセプトにしたブランドです。最初から具体的なコピー案は出しませんでした。「スキンケアに多くの製品を使うことに疲れた人へ、本当に必要な商品と成分だけを選び直す」という顧客の場面を確認し、創業者がなぜ引き算を選んだのか、商品で何を譲らないのかを言葉にしました。

次にリサーチしたのは顧客の言葉とブランドが使う言葉でした。顧客の側には「いろいろ試した」「もう増やしたくない」「選べない」、ブランドの側には「引き算」「必要なもの」「静かな自信」があり、コピーは両方をつなぐ順序で組み立てました。

完成したコピーよりも大切なのは、どの顧客のどの場面から生まれた言葉かを説明できることです。反応が弱ければ言葉だけを派手にせず、想定した場面と約束した内容と商品の事実を照らし合わせて見直してください。コピーはMVVを顧客へ届ける入口でもあります。

白い紙の上の万年筆

「言葉」をどう磨くか コピーの実務

コピーを磨く材料は、レビュー、解約理由、問い合わせ、SNS上の顧客の言葉、顧客インタビューにあります。最初から強い一文を狙わず、同じ約束を複数の言い方で書き、対象顧客の場面と商品の事実に最も近い案を選びます。不安をあおる言葉を選ばず、公開後のレスポンスや購入後の継続度合いまで確認してください。

私が現場で確認してきた改善では、ビジュアルより「言葉」を変えたときのほうが効果が大きく出ています。見出しを1行変えてCVRが2.1倍になった事例と、キャッチを「成分訴求」から「感情変化訴求」に変えてCTRが1.8倍になった事例もあるのです。

基本原則は「顧客が使う言葉を使う」です。「乾燥しやすい肌が気になっていた」という一節が「乾燥が気になる方へ」という見出しになります。

特に「ネガティブな感情への共感」は反応を得やすいものです。「何本試しても解決せず諦めかけていた」のように具体的に書き、「共感して、解決の光を示す」バランスを取ります。線を越えると、共感が不安をあおる表現に変わります。

コピーを磨く方法として「5本つくって、その中から1本を選ぶ」という習慣を勧めています。書き比べると「なぜこちらが強いか」の感覚が育ちます。この反復が、センスと呼ばれるものの正体です。

実務の要点|コピーは顧客から拾うものです。レビュー・解約理由・問い合わせの中に、最強の言葉が眠っています。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』p.79〜81およびp.84〜85を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
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山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』