事業の計画を書き出すためのノートと筆記具
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D2Cブランドの立ち上げではMVVとペルソナを決めてから商品と価格と発売の設計へ進みます。前の決定が後の条件になる理由を整理し、信頼を得る接点を設計した事例と健康ブランドの立ち上げ事例から事業全体の組み立て方を解説します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

フェーズを直列で考える理由と現実解

「全部のフェーズを並行すれば速いのでは」と思う経営者がいます。ある程度は並行できても基本は「直列優先」です。前のフェーズで決めたことが次の設計の条件になるからです。MVVとペルソナが変われば製品コンセプトに加えてパッケージとLPと広告クリエイティブも変える必要が出てきます。前を決めないまま進めた場合の「やり直しコスト」は、最初から順番通りに進めるより何倍も高くなるのです。

私が最初の1〜2か月で最も力を入れるのはMVVとペルソナの決定と事業計画です。土台が固ければその先は速く進みます。

広告と商品価値の改善は同時に進められます。広告はどの顧客がどの言葉へ反応したかを検証する手段です。結果を広告の調整だけに使わず、訴求やPR、次の製造に向けた商品の改良にも生かしてください。広告を広げる仕事と商品体験を改善する仕事はどちらかを後回しにせず、同時に進めることが重要です。

実例:信頼をチャネルで設計する

神戸のある老舗クリニックがD2C事業を立ち上げ、競合のひしめく葉酸サプリ市場に参入しました。成分スペックで差を作れず、広告依存のCPO勝負では大手に勝てない構造でした。最優先課題は「なぜこのブランドが信頼に値するか」を証明する設計でした。

打ち手として選んだのは自院の既存ネットワークを接点に使って広げる方法でした。広告で信頼を主張する代わりにすでに信頼のある場所に商品を置き、高い継続率を実現する定期モデルとステップメールのシナリオも設計しました。支援開始から約4年でこのブランドは年商12億円規模に育ちました。

この案件では、広告(左翼)と同時にPR(右翼)を販売チャネルの設計へ組み込みました。「第三者がブランドを語る」ことで信頼を得る仕組みが、成長を支えたのです。成分のスペックで比べられる市場では、どこで顧客と出会うかが、そのまま信頼の量になります。それを事業設計の中心に据えられたブランドは、広告費を抑えたまま高単価・高継続を成立させられます。

実例:「整える」から立ち上げた健康ブランドの設計

数年前に仙台で立ち上げに伴走した健康ブランドの創業者は、人の体や暮らしの不調に近い現場で働いてきた人でした。そこで抱いた「深刻になる前に日々の生活を整えたい」という思いを植物由来の素材を使った商品へつなげようとしていました。

MVVから始めました。「悪くなってから対処するより、日々の生活を整える」という考えは、創業者の経験から出ていました。市場調査から作る言葉とは、その出どころが違います。譲らないことが本人の中にあり、MVVづくりは、すでにある答えを事業の言葉へ変換する作業でした。

ターゲットも属性より生活の場面へ絞り込みました。当初は「健康に関心のある女性」としていたものの、聞き取りで見えてきたのは「働きながら日々の小さな不調を仕方ないと先送りし、ふと自分を整えたいと感じたとき」という場面です。誰のどの瞬間に届けるかが決まると訴求とパッケージで優先する情報も変わりました。

最初に問われたのは価格です。創業者は手に取りやすい価格、つまり低価格で発売しようと考えていました。ただ広告費まで織り込むと、その価格のままでは到底ペイできません。また、安い価格では「安いから試しただけの顧客」ばかりが集まり、LTVが下がってしまいます。そこで創業者の原体験から生まれた考えと植物由来の素材を商品と訴求の両方に生かして付加価値を最大化し、価格を高く設定しました。

次は広告をする最初の商品です。創業者は悩み別に複数の商品を、ローンチから幅広く広告したいと考えていました。しかし、まずブランドを代表する1つの主力商品に広告を集中させ、データが取れてから広げる順序に整理しました。

そしてローンチの順番です。発売日にいきなり広告を全開にせず、その前に「知ってもらう」段階を作りました。まだ買う気になっていない人に発売前からLINEの友だち登録をしてもらい、継続して情報を届けられる関係を作る設計です。

このブランドは成長してやがて私の手を離れました。立ち上げで大切だったのは「哲学から順番に」組み立てたことです。原体験から哲学が生まれて届ける生活の文脈が絞られました。それが価格と商品を決める条件になり、ローンチの順番にもつながりました。直列を優先するとはこの順番で事業を設計することです。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』p.69〜71を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
化粧品・健康食品D2Cは競争が激しく、正しい戦略や事例に学ぶことが成果を左右します。私たちが支援した150社の事例と最新の戦略をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。→今すぐ無料で入手する

山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』