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D2Cの運営体制は必要な役割と最終責任者を決めることから始めます。内製と外注の分け方を整理し、ブランドの方針を外部パートナーへ共有する方法と判断理由の残し方を紹介します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

運営に必要な役割を決める

運営には事業全体の管理と責任を担う役割に加えて、新規顧客の獲得と既存顧客へのCRMと顧客対応とシステム運用の役割が必要です。必要な人数は売上規模と受注件数と内製範囲で変わります。一人が複数を担っても構いません。役割と最終責任者は明確にしておきます。

役割の分け方は変わりません。ただし近年はSNSでの発信が集客にも継続にも直結するようになり、新規獲得と既存顧客の両方の担当に、従来とは違う能力が必須になりつつあります。カメラの前で自分の言葉で語れること。撮った素材をスマホのアプリでテンポよく編集できること。新規向けの縦型動画も、既存向けの発信も、この力の有無で内製の質が決まります。

これは広告運用の分析力やデザインの造形力とは違う適性です。SNSでの発信を担う人の採用や配置では「マーケ経験があるか」より「カメラの前で自然に語れるか」を基準にします。立ち上げ期なら創業者自身が担うのが最も早くて強い方法です。発売前に創業者が語るときにもこの力が求められます。

最初から全役割を社内で抱える必要はありません。ブランドの文脈理解が必要な「既存顧客(CRM)」のコアは内製する価値が高く、専門性が高く学習コストの大きい「新規獲得(広告運用)」や「システム」は外注を使って変動費化しやすいです。役割を「型」として把握しておくと、「今どの役割が手薄で、誰に任せるべきか」が見えやすくなります。

D2C運営の5つの役割と担当業務と指標と主なパートナーを示す書籍の表
運営に必要な役割と担当業務
運営の役割表をテキストで読む
事業責任者
担当業務:売上目標、各KPIの進捗管理、戦略・施策方針。主な指標:全体。主なパートナー:コンサルタント。
新規顧客獲得
担当業務:広告、クリエイティブ、ABテスト。主な指標:CPO。主なパートナー:広告代理店。
既存顧客
担当業務:CRM、クロスセル、メルマガ・LINE・SNS。主な指標:LTV。主なパートナー:制作会社。
顧客対応
担当業務:受注・発送、コールセンター教育、FAQ。主な指標:-。主なパートナー:コールセンター。
システム
担当業務:タグ設定、ツール導入、カート改修。主な指標:-。主なパートナー:ツールベンダー。

業務の進め方も見直します。すべてのタスクを書き出して分解したうえで、優先順位をつける際に意識したいのが「2割のタスクが8割の成果を生む」という考え方です。各業務で確認する項目と対応の基準をチェックリストにまとめる積み重ねが属人化を防ぎます。

最終決定者を一人にすると顧客像を守れる

意思決定者が10人以上になって方向が定まらなくなったブランドがあります。年代も立場も責任も違うから、良いと感じる案も違います。全員の意見を少しずつ入れるうちに尖った部分が消え、誰に向けた商品なのかが曖昧になっていきました。

多様な意見を集めることには意味があります。ただし最後に決める人はひとりです。全員が納得する案を目標にした瞬間に、顧客より社内の合意が優先されはじめます。

私は今の市場で立ち上げるなら少人数でスタートすることを勧めています。極端に言えば一人一ブランドです。運営はチームで行って構いません。最終決定者を一人にするのは、「誰に届けるか」と「何を譲らないか」をぶらさず差別化されたブランドをつくるためです。

外部へ任せても最後に決めるのは事業者である

OEM、デザイナー、広告代理店、コールセンターへ仕事を頼むときは、作業内容と一緒にブランドの方針を共有します。誰のための商品か。なぜこの製品を作るのか。何を変えてよく、何を守るのか。その方針の根拠になった顧客の声や購入データも共有します。前提がそろっていなければ処方、デザイン、広告、顧客対応が別々の方向へ進んでしまいます。

外部パートナーの意見は専門的な視点として歓迎します。自社からは見えなかった問題や選択肢が見つかることもあるからです。ただし採用するかどうかは事業者が決めてください。パートナーはそれぞれの専門領域から案を出しますが、事業全体に責任を持つのは事業者です。対象顧客とブランドの哲学に加えて、価格と資金と顧客への約束まで含めた判断が求められます。

採用した案とその理由を残しておけば、別の担当者や会社へ依頼するときも、同じ基準で提案を比べられます。

決めた過程を言葉にして残す

商品仕様や価格や広告表現を決めたら結論と一緒に理由も残します。どの事実を確認したのか。何を優先してその結論にしたのか。決定に関わった人には分かっていても時間が経って担当者が変われば、結論だけが残って理由が分からなくなるためです。

たとえば原価が上がっても使いやすい容器を選んだ場合です。対象顧客のどの声を受けたのか。何と比較して使いやすさを優先したのか。ここまで記録しておきます。理由が残っていなければ後から原価だけを見た人が仕様を戻し、ブランドが守ろうとした価値まで失う可能性があります。

長い議事録を作る必要はありません。確認した事実と比べた選択肢を記録します。決めたこととその理由も短く残せば十分です。後から見返せれば担当者が変わっても判断の基準はぶれません。市場や顧客の状況が変わったときも当時の前提と現在を比べられます。そのうえで何を守って何を変えるかを判断できます。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』p.66〜69を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
化粧品・健康食品D2Cは競争が激しく、正しい戦略や事例に学ぶことが成果を左右します。私たちが支援した150社の事例と最新の戦略をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。→今すぐ無料で入手する

山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』