試作を考えるためのガラス製の実験器具
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化粧品・健康食品の商品開発は顧客の生活場面と市場の空白から製品コンセプトを決め、処方と許容原価を考える順で進めます。OEM・ODMの確認ポイントと発売日から逆算する開発の進め方を解説します。

※本記事の事例は守秘のため複数の案件を組み合わせて再構成したものです。本文中の数値は個別の実績を証明するものではありません。

フェーズ2 商品開発 「価値を作る」という先行投資

商品開発で目指すのは顧客に続けてもらえる商品です。継続するかどうかは処方だけで決まりません。生活に合う使い方や価格への納得感に加えて、購入後の説明などの顧客対応まで含めた商品価値で決まります。継続購入による粗利を積み上げれば広告費を回収できるため、商品開発は削る費用ではなく先行投資として考えます。誰のために何を作るのか。起点になるMVVとペルソナから届ける価値を決めることが、何に投資するかを決めることにつながるのです。

製品コンセプトは市場の空白と顧客の文脈から生まれる

処方の前に製品コンセプトを一文で決めます。誰が、どんなベネフィットを、どんな状況で受け取るのかということです。ベネフィットには、成分や機能が生む機能価値と、使う時間の気分や自信といった情緒価値の両方を入れます。「50代を前に肌を見直したいと感じた女性が、夜の手入れを1本で終えられて、自分をいたわれたと感じられる美容液」。ここまで書けると、処方も容器も広告も同じ方向を向きます。

コンセプトの素材はすでに手元にあります。SWOTで見つけた「他社にできないこと」の延長線上にあり、ペルソナを生活の文脈で読み直したときに出てくるものです。「30代後半の働く女性向けの美容液」からコンセプトは生まれません。「夜、子どもを寝かせた後の10分しか自分の時間がない」という文脈から「夜用の1本」が生まれます。

自社で新しいカテゴリーを作ることもコンセプトの1つです。ただの美容液では大きな市場で埋もれても「夜用の美容液」と位置づければ、その瞬間に比べる相手が変わり、小さなカテゴリーの一番手になれます。一番手として顧客の記憶に残ることが指名検索につながるのです。

差別化は顧客の目で確認します。自分たちが言いたい違いと、顧客から見える違いは別物です。成分表を一言一句最後まで読み込む顧客は少ないです。顧客が比べているのは、自分の場面に合うか、続けられるか、信じられるかです。どの一点で選ばれるのかをコンセプトの段階で決めておくと、商品ラインナップやパッケージを考える際にも判断がぶれません。

処方はコンセプトと顧客から逆算する

商品開発で併せて検討すべきなのは製品コンセプトと処方、パッケージ、製造、品質保証です。対象顧客と譲らないことと価格の前提から許容原価を割り出し、成分の役割や使用感、安全性、安定性、調達、表示できる根拠を確認します。パッケージには手に取って開け、保管するまでの体験を支える設計が必要です。製造原価だけで仕様を決めず、顧客へ届ける価値と物流費まで含めた総費用で判断します。

OEMやODMを使う事業では製造側の提案をそのまま商品化しません。工場は製造の安定性と効率を考えて処方を提案することも多いです。事業者側は顧客と譲らないこと、価格の前提を伝え、提案とのずれを必ず確認してください。

「いま何の成分が売れていますか」だけを聞くと、すでに競合が多い成分へ集まりやすくなります。「これから来る成分」も他社へ同じ提案が行われる可能性があるため、流行を参考にする場合もその成分を選ぶ理由まで考えてください。

実務ではコンセプトと対象顧客と価格から許容原価を整理してOEMへ提示し、提案を待ちます。提案された処方で確認すべきなのは成分の役割と使用感、安定性、調達、原価、広告として表現できそうな内容のすべてです。1つでもブランドの世界観と合わない場合は顧客との約束を根拠に修正を依頼します。経営者や担当者の好みだけで変更するものではありません。

OEMへ丸投げせず、成分や配合を事業側だけで決めつけることも避けます。必要なのは製造側の知識と事業者側の顧客理解のすり合わせです。提案された理由を確認して必要なら試作に戻るというやり取りを重ねることで、商品開発の質が高まります。

OEMメーカー選定の確認ポイント

透明なガラス容器に入れた試作液のイメージ

OEM・ODMが前提のこの業界では、製造パートナー選びが品質とスピードを左右します。最初の打ち合わせで、最低限この4点を確認するとメーカーの経験値と誠実さがある程度見えてきます。

同カテゴリーの製造実績:似た商材を作った経験があるか。処方の勘所を持っているか。最小・最大ロット:小さく始めて、伸びたときに供給を増やせる幅があるか。処方変更の対応スピードと費用:改良や微調整に、どれくらいの時間と費用がかかるか。

容器・原材料の調達リスクへの備え:つまずきの多くはOEM自体の不備よりも外部要因で起きます。国際情勢によって容器の納期が読めなくなったり原材料が高騰したりしたとき、代替調達や価格改定を率直に相談できる相手でしょうか。製造能力と品質と価格と納期に加えて、担当者が事業者側の意図を理解しようとしているかも大切です。意図を共有できれば処方や使用感について顧客に合う提案を受けやすくなります。発注に余裕を持たせ、代替資材と連絡経路も確認してください。問題が起きたときに早く相談できる関係を作っておきます。

OEM・ODMは「ブランドを一緒に作るパートナー」として捉えます。安く作れる下請けとして扱うと、出てくる提案もそれなりになります。製造現場から見える市場動向はマーケターには見えない情報です。「ロットと納期と価格」の交渉に加えて、「目指す世界観と顧客像」「この顧客の何を変えたいか」まで共有できているかで、製造現場から出てくる提案の質が変わります。

私の現場から:完璧な処方を待つあいだも、燃料は減っている

商品開発はほとんどの人が思っているより時間がかかります。試作は最短でも3〜4か月、たいていはそこからなかなか決まりません。香りや使用感や安定性や容器に気になる点が1つ出るたびに作り直し、気づけば半年、1年と過ぎていきます。「納得のいくものを世に出したい」。その気持ちは痛いほどよくわかります。私自身、品質に妥協してほしいとは思っていません。

ここでいう「燃料」は資金のことです。開発に時間をかけているあいだも、準備のための支出は止まりません。事務所の家賃も人件費も借りたお金の利息も出続けます。売上はまだ一円も立っていないのに、燃料だけが静かに流れ出ていきます。開発に1年以上かけて、発売前にタンクが心細くなっているブランドを、私は何度も見てきました。完璧な処方を追ううちに、それを世に出すための体力のほうを失っていたのです。

1つ有効なのは、開発に入る前に「発売日」を先に決めてしまうことです。締め切りがないと、試作は無限に続きます。「この日に出す」と決めればそこから逆算して「どこまでが必須で、どこからは発売後の改良でいいのか」の区別がはっきりします。完璧を待たないでください。締め切りが品質の優先順位を決めてくれます。

商品の質を軽視して発売を急ぐという意味ではありません。残りの資金と開発期間を踏まえて、発売前に必ず満たす要素を決めます。発売後の反応を見て改定版で改善できる要素は分けて考えます。顧客の声は社内で立てた仮説が合っているかを確かめる材料です。処方の良し悪しは顧客の声と品質と安全性と根拠を合わせて判断します。発売前と発売後の役割を分けて最初の商品を「いつ出すか」決めることも設計の一部です。

本記事は『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』第3章p.56〜60を基に再編集しています。記事単体で読めるように書籍への参照を調整し、本文を「です・ます調」に整えています。

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この記事の著者

山口尚大
山口尚大化粧品・健康食品D2Cコンサルタント・著者
著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』
化粧品・健康食品D2Cは競争が激しく、正しい戦略や事例に学ぶことが成果を左右します。私たちが支援した150社の事例と最新の戦略をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。→今すぐ無料で入手する

山口尚大

著書3冊|化粧品・健食D2C業界20年。150社250ブランドの実績。新規ブランド立ち上げから既存ビジネスの伸び悩み打開までを事業プロデュース。クリームチームマーケティング代表|日本ネット経済新聞連載中

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・最新刊『化粧品・健康食品D2Cのブランド経営』