昨今の社会状況の急激な変化により、主力としていたビジネスに限界を感じて新たな事業を始める経営者が増えています。新たな柱となる事業を選ぶときに重要なのが、業界の将来性や収益の安定性です。そう考えたとき、化粧品・健康食品EC・D2Cはとても有望なビジネスだといえます。そうと言い切れる理由を5つにまとめました。
「美と健康」は人にとって永遠のテーマだから
古代から、美と健康は人類が常に興味関心を抱き続けているテーマです。「マズローの欲求5段階説」は有名なのでご存じの方も多いでしょう が、ここであらためてご紹介させてください。
マズローの欲求5段階説とは、人の欲求を5段階のピラミッドに分類し、「低い位置にある欲求が満たされると、人は次の階層の欲求を満たそうとする」という考えかたです。階層が低いほど人間の根源的な欲求に近い基本的な欲求ということになります。
このピラミッドに当てはめてみると、化粧品や健康食品は「健康に 生きたい(=生理的欲求)」「 今抱えている悩みを解消し、安全を保ちた い(=安全欲求)」「美しさを保ち、人から認められたい(=社会的欲求、 承認欲求)」「より健康で美しい理想的な自分でありたい(=自己実現欲求)」というすべての段階の「欲求」を満たすプロダクトといえます。国 籍や性別、年齢などにかかわらず、人類が普遍的に持つ基本的欲求すべ てを満たすもので、このビジネスが消えてなくなることはありません。
女性の富が増え、少子高齢化社会で 「美と健康」に消費が集まるから
日本の高齢化は、1970年代からすでに始まっていたと言われています。高齢化にはさまざまな課題がありますが、化粧品・健康食品ビジネスの観点からすると、シニア向けの市場が伸びるというプラスの可能性を秘めています。
2030年の世界のトレンドについて予想した『HowToday’sBiggestTrendsWillCollideandReshapetheFutureofEverything』(ウォートンスクール教授、マウロ・ギーレン博士著)によれば、すでに世界規模で少子高齢化は進んでいます。
さらに興味深いのは、同書では2030年までに女性がさらに豊かになるとも予測されていることです。女性が所有する富の割合は、2000年には全体のわずか15%でした。しかし2030年には55%にまで増えることが見込まれています。女性の社会進出が増えたことに加え、男性よりも女性のほうが寿命は長いため、最終的に遺産というかたちで女性のもとに富が集まりやすいことも理由のようです。
メンズコスメの市場も増加傾向にありますが、化粧品ビジネスのメインターゲットはやはり女性です。女性が豊かになれば、それだけ化粧品が売れやすくなります。さらに女性の場合、子どもの教育、美と健康に代表されるヘルスケア、それから保険など身の安全を守るための商品やサービスにはとくにお金をかける傾向があります。女性が豊かになれば、健康食品の購買率も上がるというわけです。
このことを裏付けるように、女性向けの健康美容サプリメントの世界市場は2022年から2030年の間に年平均12.4%の成長率で成長し、2030年には市場規模が2兆5,420万円に達すると予測されています(出典:ReportOcean,2021)。
シニア向けの健康ビジネスが伸びていること、女性がさらに豊かになりつつあること、そもそも化粧品や健康食品そのものが人間の基本的欲求を満たすものであること。これらの要因があることを考えれば、化粧品や健康食品業界が衰退する可能性はほとんどなく、今後はさらに拡大していくだろうということがおわかりいただけるでしょう。
安定した収益を生み出すビジネスモデルだから
シニア向けの健康ビジネス市場にはかなり伸びしろがあるとはいえ、同時に少子化も進んでいます。「人口が減ると、いずれ市場は縮小するのではないか」という懸念を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、「買い切り」というビジネスモデルでは、商品やサービスを買ってくれる人が減ればビジネスも縮小せざるを得ません。そこで近年は買い切りではなく、ひとりの顧客と長く付き合い、長期的に商品やサービスを購入してもらう「サブスクリプション」というビジネスモデルが主流になりつつあります。
サブスクの主なモデルは、定期購入や定額使い放題です。月額980円で電子書籍が読み放題になるKindleUnlimitedや月額990円で動画が見放題のNetflix、月額500円で毎月自宅に花が届くBloomeeなど、さまざまなサブスクがあります。
サブスクの特長は、顧客と長期的な関係が構築でき、ビジネスの収益が安定しやすいことです。ただ、どのような商品やサービスでもサブスクにすれば成功するわけではありません。カギとなるのは、人の生活習慣に入り込めること。すなわち、日常的に必要性が高く、かつリピートされやすい商品を選ぶことです。たとえばアパレルは日常的に必要性が高いものですが、商品の寿命が長いためリピートされにくく、定期購入には不向きです。
けれども、化粧品や健康食品は商品のライフサイクルが比較的短いうえ、長期間にわたってリピートされやすいという特長があります。たとえば化粧品であれば、毎日利用する女性がほぼ100%です。また使う期間も、成人する前の15歳くらいから女性の平均寿命である90歳近くまで一生使い続けるプロダクトといえるでしょう。実際に、化粧品や健康食品の定期購入サービスを扱うメーカーも増えています。この点について、詳しくは他の記事で解説していきます。
日本では美容医療やメンズコスメの波が訪れているから
世界から日本に目を向けてみると、美容医療の浸透とメンズコスメの需要の高まりという2つの大きな流れが挙げられます。
病気やケガをしたとき、私たちは医療にかかり適切な処方を受けますが、近年、ピーリングやレーザー注射、整形手術など、美容を目的とした美容医療が注目されています。
整形手術や乳房インプラントのような大がかりな医療行為から、まぶたを二重にする・シミやあざを取り除く・皮膚のたるみを引き上げる施術など、「プチ整形」と呼ばれるような比較的軽微な処置も増えてきました。
手軽に美しくなれる技術が多様化したことで、美容医療の市場は大きく成長、矢野経済研究所が発表した「美容医療市場に関する調査」では、2010年には2,384億円だった美容医療市場は、2019年には4,070億円にまで拡大しています。
女性のみならず、男性もコスメを購入してケアすることが当たり前になってきました。ドラッグストアではメンズコスメの棚がつくられ、さまざまなメーカーの商品が陳列されています。基礎化粧品で肌を整えるだけでなく、メイクをする男性も増えてきています。
株式会社インテージの調査によれば、メンズコスメ市場、特に基礎化粧品に関しては、2016年の222億円に対して2020年には256億円と、116%も市場が拡大しているのです。
安定し巨大な市場規模を持っているから
日本国内の化粧品市場は、2000年以降、2兆円前後と安定した規模で推移しています。2020年の市場規模は2兆2,350億円とコロナの影響で人々が外に出なくなり、やや市場規模は縮小していますが、これも一時的なものだと考えてよいでしょう。
また、健康食品市場では上向きの動きが出てきています。2000年には9,742億円だったサプリメント市場は、2021年には1兆円を超え、さらに拡大する見込みです。
健康食品市場は潜在市場まで含めると3.5兆円を超えるといわれており、化粧品市場と合わせると、市場規模は6兆円を超えます。
6兆円という市場規模をその他の業種と比較すると医療機器(約4兆円)お菓子(約3.2兆円)お酒(約3兆円)やたばこ(約2.9兆円)をはるかに超え、家電業界(約7.7兆円)に迫る勢いです。
それらを考えると、6兆円という市場がいかに巨大か、おわかりいただけるのではないでしょうか。もはや化粧品・健康食品市場は、「参入しない理由がない」と言えるほどの盛況ぶりなのです。
この記事の著者
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2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。
・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中
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