ダイレクトマーケティングを用いた販売の仕組みを考えるとき、どのような商品が適しているのでしょうか。ダイレクトマーケティングでは、市場シェアを拡大することではなく利益を追求することが目的です。そのため、消費サイクルが短く、よくリピートされる商材が適しています。
例えば、口紅やファンデーションなどのメイクアイテムと、化粧水や美容液などスキンケアアイテムを比べた場合はどうでしょう。
口紅やファンデーションなどのメイクアイテムは、その時の気分や季節などで度々変えることがあるかもしれません。「今日は少し気分を変えて違う口紅を使ってみよう」といった具合です。違う色味やブランドのメイクアイテムがたくさん余っている、といった消費者の方も多いのではないかと思います。そのため、1本あたりの消費期間が2~3ヶ月、あるいはそれ以上と、思った以上に長くなってしまうことが多々あります。
一方、スキンケアアイテムはどうでしょう。自分の肌との相性やテクスチャーの好みなどでひとつの気に入った商品を選び、毎日同じ化粧水・美容液などを使ってケアするのが一般的ではないでしょうか。「毎日違う化粧水を使ってみよう」とはならないのです。
つまり、メイクアイテムとスキンケアアイテムを比較した場合、その消費サイクルがより短いスキンケアアイテムのほうがダイレクトマーケティングの商材としては適していると言えます。具体的にLTVを計算してみると一目瞭然です。
例えば1,200円の口紅を通販で販売するメーカーがあるとします。口紅は消耗品ですが、意外にもその消費サイクルは長いものです。それに加え、別のブランドの商品を使い回すとした場合、半年程度は使い切らないこともざらにあります。この口紅の消費サイクルを仮に3ヶ月間とした場合、年間で4回しかリピート購入されません。目移りのされやすいメイクアイテムのなかで、運良く継続的なリピート購入に繋がったとしてもです。LTVで計算すると、1,200円×4回=年間わずか4,800円の売上です。1年間で最大4,800円、これが通販ビジネスとして成り立つのかと考えると、非常に厳しいのではないでしょうか。
さらに1年間に4回リピートしてもらうには、これまでお話してきた継続的なアフターフォローやアプローチなど、相当な努力が必要です。そんなリピート購入の施策を打ったとしても、年間の売上が4,800円ということです。さらに、リピート販売に至るためには、そもそも新規顧客を獲得する必要があり、広告費がかかります。それに加え、送料負担、人件費、サイト運用コスト、カートシステム、サーバーなどの諸経費、もちろん商品製造の原価までを考えると、とてもではないですが、ビジネスとしては成立しません。全国にドラッグストアなどたくさんの販売チャネルを持ち、薄利多売のビジネスモデルを目指すのであれば良いかもしれませんが、通販ビジネスで考えると、1,200円の口紅は商材として明らかに選択ミスであるということがわかるのではないでしょうか。
一方、化粧水であれば1本5,000円~6,000円などの価格設定にすることも可能です。また1ヶ月程度で使い切ることが多いでしょうから、6,000円×12回、単純計算で年間72,000円の売上となります。