これから新規参入するメーカーや、すでに商品を販売しているものの売上が頭打ちになってしまっているメーカーにとって、現状の市場で大きな売上をあげるというのはなかなか難しいと言えます。
その理由は、競合があまりにも多すぎるからです。既存の市場に新しい商品を作って投入したとしても、コストだけでなく時間もかかりますし、似たような商品がたくさんあるため、すぐに埋もれてしまいます。
視点を変えて自分だけの市場をつくってしまうほうが、競合もおらずスピードも早い。マーケティングでは、こういった考え方を「カテゴリーワン戦略」と呼んでいます。
ニキビ用化粧水を例にしてみましょう。ニキビと言えば、かつては顔のニキビに関する商品しかありませんでした。人前に出て気になる部分というのは顔なので、「ニキビ用化粧水といえば顔用のものしかない」と思い込んでいるメーカーがほとんどだったと思います。
しかし、ターゲットを絞り込み、ニーズをリサーチしていくと、ニキビで悩んでいる人の中には、顔だけでなく背中のニキビに悩んでいる人が一定数存在していることがわかりました。
これまで、人に見られるのは顔だけだと考えられていたところ、「背中を出すような服を着たい、でも背中のニキビが気になって着られない」そんな悩みを持っている人も多いことがわかったのです。
そこで、背中専用のニキビ用化粧水を発売してみたら、これまで販売していた顔用の化粧水とは比べ物にならないほど大ヒットしました。切り口を変えて新しい市場を創出し、ターゲットの悩みにピンポイントに応える商品を販売したことで、その市場を独占することができたのです。もちろん、その後似たような商品はたくさん発売されましたが、先行者利益は取れましたし、何よりも背中ニキビの市場でのポジションは、現在ではしっかりと確立されています。
既存の競合の多い市場をあえて選んで参入するよりも、まだ誰もいないカテゴリーの市場を狙うのは、これから新規参入をしようとしているメーカーや、売上が頭打ちになっているメーカーのマーケティング戦略としては非常に効果的です。
「新しい市場を創出する」と聞くと難しい話に聞こえるかもしれませんが、実際には既存の市場の切り口を少し変えるだけで良いのです。まだまだ新しい市場はたくさん創出できると思います。カテゴリーワンをどのように狙っていくかの具体的な方法は、別の記事で詳しく触れていきます。