代理店や卸などの形態ではなく、メーカーとしてブランドを持ち商品を販売していく場合には、製品を自社で開発しなければなりません。しかし、製品を自社で開発するのは大変なこと。社内でおこなうならば社内にラボなどの開発部署が必要ですし、研究者を雇用するとなれば人件費も多額にかかります。
商品化に成功したあとも安定して生産し続けられる品質が求められますし、売れ続けるためには、ユーザーの声を反映してブラッシュアップし続けることも重要です。事故が起こらないように、製品の安全性にも配慮しなければなりません。このように、自社で製品を開発するとなると、大きなコストと手間がかかるのです。
しかし、化粧品や健康食品においては、実は自社で製品を開発しなくても、希望に沿った製品をつくることができる仕組みが用意されています。それがOEMというシステムです。実は、化粧品や健康食品業界の8割以上が自社で製品を開発せずにOEMを利用しています。
OEMとは、「originalequipmentmanufacture」の略で、OEMメーカーと呼ばれる製造メーカーが他社のブランドの製品を製造することを指します。OEMメーカーは自社に工場を持ち、受託した製品を研究・開発します。
委託するメーカー側は、「このような成分を含んだ化粧水をつくりたい」「この素材を使った基礎化粧品のラインをつくりたい」などのリクエストをOEMメーカーに伝え、OEMメーカーはメーカーと協力してそのリクエストに沿った製品を開発・製造します。そのほかにも、すでにOEMメーカーが開発している製品をそのまま商品化するケースもあります。
OEMメーカーに開発から製造までを委託することで、メーカーは自社で開発する必要がなくなりますから、開発コストが大幅に削減できます。また、メーカーに化粧水や健康食品の専門的な知識がなくても製品が開発できることから、実際に、異業種から化粧品や健康食品業界に参入している企業は少なくありません。
たとえば、ある企業は本業でのつながりから偶然お医者様と知り合い意気投合、新規ビジネスの立ち上げにあたりドクターズコスメの開発に乗り出しました。また、「社員の肌の悩みを解決したい」という思いから、まったくの異業種から化粧品EC・D2Cビジネスに参入したケースもあります。
自社で開発や製造を行わなければならない場合、年単位の期間がかかることもあるかもしれません。しかしOEMなら、早ければ数週間で製品をかたちにすることが可能になるのです。
OEMには、もうひとつ大きなメリットがあります。それが生産数です。
従来OEMを利用しても、製造ロットは数千個、数万個単位でした。しかし最近は多くのOEMメーカーが差別化のために小ロットでの製造を打ち出してきており、数百個単位で製品を生産することができるようになってきています。
生産数が多ければそのぶん在庫を抱えなければなりませんから、保管にもコストがかかります。それに、万が一売れなければコストを回収することができません。化粧品や健康食品には使用期限がありますから、期限を過ぎてしまったものは破棄しなければなりません。しかし、小ロットから製造できれば、こうしたリスクを負わずに済むのです。
このように、開発・製造、さらには保管に至るまで、化粧品や健康食品においては、製品をつくる環境が十分に整っています。