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Toggle人の心を動かす「仕掛け」
では、具体的に人の感情を動かす方法にはどんなものがあるのでしょうか。ダイレクトマーケティングの世界では、そのようなものを「心理トリガー」と呼んでいます。心理トリガーというのは、顧客が何かを購入するときの「きっかけ」「決め手」になるような心理的な仕掛けです。ここでは、化粧品・健康食品の販売に役立つテクニックや、間違いやすい考え方を、具体例を交えて紹介していきます。
テクニック 1 プレゼントはサプライズで
通販ビジネスでよく使われる手法が「プレゼント」です。例えば、定期的に購入している商品に、おまけやサンプルがプレゼントとして一緒に送られてくるといった経験がある方も多いのではないでしょうか。こういったプレゼント施策において間違いやすいのは、「定期購入の何回目にプレゼントをあげます」と事前に伝えてしまっているケースです。プレゼントがあることを事前に知らせてしまうと、それ自体は嬉しいことでも「感情を大きく動かす」といった効果は期待できません。つまり、「プレゼントをあげれば長く継続してくれるだろう」というビジネス上の意図が消費者にも見えてしまい、その価値が半減してしまうのです。もらえると思ってもらうプレゼントよりも、ある日、突然プレゼントが届いてくる。こちらのほうが喜びを感じ「感動する」人は多いものです。特に女性はサプライズが大好きです。サプライズでプレゼントをもらうことにより、「自分にとっての特別感」や「優位性」も感じます。このような感情も相まって、ブランドロイヤリティ、つまりブランドへの愛着や好きという気持ちが醸成されやすくなるのです。もし、おまけやサンプルなどのプレゼント施策を考えているのであれば、サプライズとして送ったほうが効果的であることは覚えておきましょう。
テクニック 2 キャンペーンは一度だけで終了しない
例えば、あるお試しセットを一定期間だけ通常価格の 50%OFF で販売していたとしましょう。その期間が終了したあと、「好評につき、あと 1 週間期間を延長いたします」と、キャンペーン期間を延長するのです。こうすることで消費者の需要を一度で終わらせることなく、再度促すことが可能になります。これは、もともとキャンペーンに興味のなかった消費者に対し「いま買わないと次は本当に 50%OFF では購入できなくなる、損をするかも」と改めて思わせるきっかけになり、「あのとき買っておけば良かった」という後悔はしたくない、そんな感情を醸成することにもなります。この手の感情は、購買行動に関して大きな影響力を与えることができるのです。同じオファー内容で期間だけを何度も延長すると景品表示法に抵触する可能性が高くなるため注意は必要ですが、消費者を動かすという意味で非常に有効な手段です。期間限定のキャンペーンや割引の施策を実施した場合、キャンペーン期間が終了したら一度で終了するのではなく、反応がなかった層への最需要を促すためのテクニックとして使ってみると効果は高くなるはずです。
テクニック 3 メルマガの送信者は個人名を使う
商品を購入したあと、サポートセンターやお客様センターからメールマガジンやサポートメールなどが届いたりすることがあると思います。アフターフォローにおいてメールマガジンなどの送付は、今でも非常に重要です。ただ、せっかく送付したメールマガジンも読まれなくては意味がありません。個人のメールボックスは他社のメールマガジンやお知らせなどが追いきれないくらいに溢れかえっているのではないでしょうか。混沌としたメールボックスの中で開封率を上げるためには、いかに目立つのかを考えるしかありません。そのポイントとなるのは、「件名」と「送信者」です。そもそもメールというのは、個人と個人のやり取りの場、コミュニケーションの場でした。そのため、メールの送信相手が自分の知っている人であれば当然開封して内容を確認することになります。これを利用して開封率を上げるのです。具体的に言うと、アフターフォローやサポートなどのメールは、組織ではなく、個人名を使って送信すると目に留まりやすく、開封率が上がってきます。「お客様センター」や「○○事務局」といった事務的な送信名で送られてきたメールは、メールボックス内で埋もれてしまい、開封しようとは思われません。しかし、「クリームチームマーケティングの山口」といった個人名を送信者に設定することにより、他の事務的なメールよりも圧倒的に目に留まりやすく、開封してもらえる確率も上がるのです。これは、私がオーダースーツを購入したときの話です。その店舗のテーラーとして担当していただいた方が、小林さんという方でした。通常のスーツ屋であれば、店舗で購入すればそこで関係性は終わりなのですが、家に帰ってみると小林さんからメールが届いていたのです。さらに、その後も小林さんからのメールは続き、顧客との繋がりをしっかりと意識した会社だと私は感じました。内容は購入後のお礼メールにはじまり、季節ごとの夏服冬服のおすすめ、定期的なセールのご案内などのメールマガジンも送られてきます。これらのアプローチは、購入したあとのいわゆるステップメールに組み込まれているものだと思うのですが、送信者をテーラーの小林さんにしていることで、購入したときの感情をずっと持ち続けることができ、自然とメールを開くことになったのです。「オーダースーツ○○店からお知らせです」という件名にするのではなく、「今日はありがとうございました」といった件名と「小林さん」の個人名で送信されたメールは、とても親しみを覚えるものなのです。メールは、まずは開いてもらうことがとても大切です。それを実現するためには、よりパーソナルなスタンスで顧客に接触していくことが、とても効果的です。
テクニック 4 大事なことは何度も伝える(刷り込み効果)
ある女性が、これまでに使ったことのない新しいスキンケア商品を使い始めました。スキンケア商品は、ある程度の期間使用し続けないと、肌にどのように効果が出るのかはわからないものです。使っていくうちに肌の質感が変わったり、肌荒れが収まるなどの変化が現れてくるとは思いますが、消費者は本当にその化粧品を使ったことによる影響なのかは確信できません。体調がたまたま良かったということかもしれませんし、他の化粧品の影響かもしれません。その際、「この製品を使ったことでお肌に変化が起きた」「この製品が自分の肌に合っているんだ」と感じてもらうには、どうしたらよいでしょうか。実は非常に簡単なことで、その変化を何度も顧客に伝えるのです。「お手入れしたときに、手にお肌がくっつくような感じがしませんか」「毎朝、化粧のノリが変わってきていませんか」「そろそろお肌の調子が良くなってきていませんか」と伝えてみるということです。実際は、スキンケア以外にも食事や生活環境など様々なことが影響して肌の状態に変化が起きているのでしょう。ただ、その効果にはこの製品が影響しているのだと伝え続けることで、製品を使っている顧客は「この製品の影響かもしれない」「この製品が私には合っているのかもしれない」という感覚になります。言葉にし続けることで、自然と自分が同じように感じているような感覚になるのです。効果をメーカー側からしっかりと伝えることで、製品の良さを感じてもらうことができます。結果、これからもこの製品を使い続けようと思わせることができるのです。
テクニック 5 売上ランキングを作ってみる
「みんなが持っているから、良いもの」「みんなと同じものだから、安心」その製品の良さと、みんなが持っているかどうかという点に相関関係はなく、全く根拠はありません。にもかかわらず、このように感じてしまうことがあります。それを心理学では、「バンドワゴン効果」と呼びます。行列で並んでいるラーメン屋を見ると「絶対においしいに違いない!」と思わず自分も並びたくなってしまいます。一方、店の中を覗いてもお客さんが全然いないと、たまたまその時間帯にお客様がいないだけかもしれず、本当はとても美味しいのにもかかわらず、そういったお店は避けてします。これもバンドワゴン効果のひとつです。この心理トリガーは、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。「みんなが買っているから」という理由に基づく安心感は、売上に繋げることができるのです。これを利用したのが、「売上ランキング」です。「一番売れている商品だから一番良いもののはず」、そう安心して買ってしまう人が、非常に多いのです。しかし、化粧品・健康食品の EC サイトを見てみると、意外にも売上ランキングを作っていないメーカーが多い印象です。売上ランキングがトップページにあると、訪問したお客さんは必ず注目します。「なるほど、これが一番売れているのか」と、ひと目でわかるのがポイントで、逆にランキングがないと「結局何が一番いいの?」と、そのまま別のサイトに離脱してしまう可能性すらあります。ランキングに関しては EC サイト運営しているメーカーであれば、絶対にトップページに表示したほうがいいとおすすめしています。ランキングを作ることで、必ず売上に繋がってくるでしょう。
テクニック 6 選択肢は多くても「3 種類」まで
選択肢が多いことは、基本的には消費者にとってポジティブな要因となります。消費者が望むものを選ぶことができる、好きなものを選択できるという状況は、メリットだと考えるのが一般的です。しかし、行動心理学の観点では、人間が正しく自分で選ぶことが可能なのは、多くても 3 つが限界だと言われています。そのため、選択肢が 10 個も 20 個も存在すると、その中からどれを選択したら良いのかがわからなくなり、商品は購入されなくなってしまうのです。ある心理学の実験で、スーパーに缶詰を少数並べた場合と多数並べた場合で、購入された売上を比較しました。そうすると、少数を並べたほうが売上が高かったのです。これは通販化粧品、健康食品の販売にも当てはまります。例えば、ランディングページに自社が販売している商品の全てのラインナップを掲載した場合、そのページ訪問した消費者は自分が何を買ったら良いのか選択できず離脱する可能性が高いということです。人間にとって選択肢が多すぎる状況というのは、選ぶ行為が苦痛になるということ。つまり、商品を「選択し」「購入を決断する」その行為そのものが苦痛になってしまい、結果、購入を避けてしまうのです。もし、複数のオファーを作るのであれば、多くても 3 つまでです。どうにかして商品を売りたいという気持ちは理解できますが、そのすべてを提示していては、売れるどころか離脱に繋がってしまいます。選択肢が多いほうが消費者にとっては良いだろうと考え多くのオファーをしても、こういった消費者心理を理解していなければ、せっかく訪問してきた見込み客をみすみす逃してしまうことになるのです。
テクニック 7 与えてから取り上げる
人は、これから新しく何かを手に入れるという利益よりも、すでに持っているものを失う喪失感のほうをより大きく感じます。つまり、得られる利益よりも、失うことによる苦痛のほうが大きいのです。そのことを上手くダイレクトマーケティングに応用している事例が、これからお話しするクーポン券の施策です。メルマガにクーポンコードを掲載して配信するなど、クーポンを配布すること自体はとても簡単で、ウェブ上だけでも完結することが可能です。クーポン券などの割引施策自体はとても有効ですが、それをいかに利用してもらうかは、また別の課題となります。私がマーケティングをお手伝いするときには必ず、クーポンは実物、印刷物として渡すようにお話をしています。クーポンコードを紙に印刷して、実際に郵送するのです。なぜなら、クーポン券として実物を渡すことで、顧客はその割引と同等の権利を手に入れたことを実感することができるからです。クーポン券というのは、ある商品を割引価格で購入できる、いわば「金券」です。50%オフや送料無料など、それを使うことによってその分、得をすることができる、まさにお金の代わりなのです。渡されたクーポン券の期限が迫ると、多くの人はそのクーポン券を使わなければ損をするという心理が働きます。その結果、特に必要に迫られていない場合であっても、クーポン券を利用して商品の購入に至るのです。使わなければ紙くずになる。それが喪失感に繋がり、失いたくないと感じてしまう。実物として財布などに入れてあるとその気持ちは余計に強く働きます。一度、手に入れたものは失いたくないという心理、これを理解していれば、様々な施策に応用できるはずです。
テクニック 8 何回も接触する
一度だけ会ったことのある人よりも、10 回会った人のほうが好きになる。これは「単純接触効果」という有名な心理学の法則です。「接する機会が多ければ多いほど、相手に好感を抱きやすくなる」という話で語られることが多いのですが、この法則はダイレクトマーケティングでも利用することが可能です。この効果は、実際に対面で会うだけではなく、私たちがメインでお客様とコミュニケーションしている方法、つまりメルマガや DM などにも当てはめることができます。一度商品を購入したことのある化粧品メーカーから何度もメルマガや DM が送られてくると、全く送ってこないメーカーと比べると記憶にも残りやすく、「今月は届いていないな」と親しみさえ持つようになります。「メルマガや DM を何度も送ったら、お客さんは鬱陶しいと思うのではないか」そんな疑問を持つメーカーがほとんどだと思いますが、実際にはメルマガを何度も送ることによって単純接触効果だけでなく、すでにお伝えした刷り込み効果も生まれるため、売上に繋がりやすくなるのです。たとえ同じような内容のメルマガであったとしても、何度もメールボックスに入っていることで自然と親しみを感じるようになるのです。どのくらいの回数、どれくらいの頻度で接触するのがベストなのか。それはケースバイケースではありますが、少ないよりも多いほうが確実に効果的が高いと、多くのメーカーでのケースを見て感じています。この話はとても重要なので、次のChapter4 でもお話ししていきます。
この記事の著者
- 山口尚大
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2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。
・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中
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