ここまで業界をとりまく環境の変化についてお話ししてきましたが、最後につけ加えておきたい重要なことがあります。それは人と組織運営の問題です。ここ数年、企業が人材を確保することが非常に難しくなっています。これは日本社会全体にも言え、化粧品・健康食品業界においても深刻な問題です。特に中小企業の採用の現場では「求めている人材が全く集まらない」と、悲鳴とも聞こえる声をよく聞きます。
この10年で、働き方は非常に多様化しました。2000年代には新卒で入社し定年まで勤めるという終身雇用神話が崩れ、転職という選択肢が取られはじめました。それに合わせるように派遣や中途採用市場も大変賑わっています。
そして最近では、企業に頼らずフリーランスとして働くという選択肢も生まれてきました。つまり、これまでのように組織に属し、正社員として働こうと考える人材が減り、特に優秀な人材ほど良い条件を求めて転職したり独立してフリーランスになったりするケースが増えているのです。
特に通販ビジネスにおいては、ECサイトの適切な運営とマネジメントができ、その本質を理解している優秀な人材が必要です。ECサイトの運営については、SEOやUIデザイン、SNSの運用など専門的な知識をもった人材が求められます。売上に直結する業務に関わる人材には、企業としても妥協できない部分が多いのではないでしょうか。「通販ビジネスに興味がある」そういった人は増えてはいますが、本当に運営を任せることができるレベルとなると、なかなか確保できないのが現状です。また、仮に優秀で適性のある人材を確保できたとしても、働く環境に魅力がなければ社内に留めることは難しく、企業側も頭を抱えているのです。
実際、ポテンシャルの高い人材を採用したのに、社内に専門性やノウハウが蓄積されておらず、満足できる仕事や環境を提供することができない、そのため短期間で離れていくという話はよく聞きます。「人手不足」という言い方をされていますが、実際に人手が足しているというよりも、現状の通販ビジネスに適した欲しい人材が不足しているのです。