デザインがこれだけ重要な理由
製品が出来上がったあとに重要になってくるのがパッケージデザインです。顧客はパッケージデザインを見て、その製品に魅力を感じるか、関心が持てないかを瞬時に判断します。
ニュースなどで話題になっているプロダクトがすごくよさそうなので実店舗に見に行ってみたら、デザインがイマイチであまり購買意欲をかき立てられなかった、という経験をしたことはありませんか?逆に、そこまでほしくはなかったのに、実際に見てみたらデザインが素敵でつい買ってしまった、という経験をした人も多いことでしょう。
化粧品や健康食品に限らず、デザインというのは購買を大きく左右する重要な要素なのです。
では、なぜ視覚情報であるデザインがそこまで重要な要素となるのでしょうか?いくつか、根拠となるデータを示してみましょう。
有名な「メラビアンの法則」
視覚情報の重要性について心理学的に分析した「メラビアンの法則」があります。これはアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した法則で、簡単に説明すると、人が発する言葉と感情や態度が矛盾していた場合、相手はどのような情報に基づいて印象を判断するのかを示したものです。
メラビアンの法則によれば、言語情報:7%、聴覚情報:38%、視覚情報:55%ということがわかりました。要するに、「楽しい」と言葉では言いながら表情が暗い場合、人は「楽しい」という言語情報よりも、表情が暗いという視覚情報をはるかに優先して印象を判断しているということです。
メラビアンの法則は、いかに視覚から得られる情報が人の印象に影響を与えているのかを示しています。
「情報の80%以上は視覚から」という研究結果も
日科技連出版社が1972年に出版した『産業教育機器システム便覧』によれば、五感による知覚の割合として、「味覚1.0%、触覚1.5%、臭覚3.5%、聴覚11.0%、視覚83.0%」というデータが得られています。
この他にも、視覚情報は文章よりも60,000倍も早く脳に伝達されるなど、視覚情報がほかから得られる情報に比べて非常に大きな影響を及ぼすとする主張は、至る所でなされています。「目から入ってくる情報」というのは、それだけ重要なものなのです。
違和感のないパッケージデザインとは?
化粧品や健康食品において、視覚から得られる情報にはさまざまなものがあります。ボトルの形状やラベルのデザイン、文字のフォントやイラスト、ロゴ、レイアウト位置なども視覚情報です。また、パッケージの質感も視覚情報といえます。
製品が入っている箱はつるりとした質感なのか、それともザラザラしているのか、ボトルは透明なのか、すりガラスのように曇っているのかといったことも印象に大きく影響します。その製品が魅力的だと思えるためには、こうした細かい要素の全てにおいて統一感を持たせることがとても重要です。
オーガニックコスメでナチュラルな雰囲気を演出したいのにロゴがポップだと、少し違和感があります。外箱は重厚なイメージなのに製品のラベルが安っぽく見えてしまうのも同じです。パッケージ全体のデザインに統一感を持たせられないと、顧客が違和感を覚え、購買意欲が下がってしまうのです。
統一感を出すためにとても重要な要素が、今までもずっとお伝えしてきている「ミッションやビジョン」です。ミッションやビジョンがしっかりしていれば、どんなにパッケージデザインの要素が多くても統一感を損なうことがありません。なぜなら、ミッションやビジョンからずれると、つくっている本人が違和感を覚えるからです。
今、世界的にSDGsへの取り組みが活発になっています。日本でも大企業や自治体を筆頭にSDGsへの関心が強まる中、化粧品市場においても、環境に配慮していることをミッションやビジョンに掲げるブランドが多く出てきました。
たとえば、オーガニックの素材を厳選し、環境を汚さない製品を生み出すことをミッションに掲げているブランドがあったとします。ところが、製品を買ってみると過剰包装でゴミがたくさん出るとなったらどうでしょうか?「オーガニックの素材を厳選し、環境を汚さない製品を生み出す」というミッションに共感して製品を購入した人は、「言葉ではそう言っているが、環境に配慮しているとはとても思えない」と違和感を感じ、がっかりしてしまうかもしれません。
環境に配慮するというミッションを実現するために、廃材をパッケージに使用したり、最近では竹を使った原料も注目されています。こうした素材選びも、ビジョンを視覚化するのに役立ちます。