私が化粧品や健康食品市場に参入したいと考えている方にコンサルティングをおこなうときには、必ずミッションやビジョンについて徹底的に掘り下げ、明確に言語化するところから始めています。
なぜミッションやビジョンは必要なのでしょうか?なぜ、策定する必要があるのでしょうか?
それは、ミッションやビジョンがビジネスの根幹だからです。企業がどのような使命を持ち、どのような世界の実現を目指すのか。それは、木にたとえると幹や根の部分にあたります。根や幹がしっかりしていれば、木はぐんぐん水を吸って成長し、どこまでも枝葉を広げることができます。しかし根や幹がひ弱な木はうまく栄養を取り込むことができませんから、大きく育つことができません。ビジネスも同じで、ミッションやビジョンという根幹がしっかりしていなければ大きく成長することができないのです。
ミッションやビジョンを持つことで競合他社との差別化に成功している顕著な例として、スターバックスがあります。スターバックスが売っているのはコーヒーですが、掲げているミッションは「美味しいコーヒーを売る」ことではありません。家でも職場でもない「サードプレイス」を提供することをミッションに掲げているのです。
このように明確なミッションやビジョンが決まっているからこそ、店舗の立地や店内のインテリア、席の配置やスタッフの制服、メニューなどのあらゆる要素を決定する拠り所となっているのです。
単に「美味しいコーヒーをたくさん売って儲けたい」というだけであれば、ソファ席を置かずに小さなテーブルと椅子だけを並べて、できるだけ多くの席をつくって客数を増やしたり、あえて居心地を悪くすることで回転率を上げたりすることもできるわけです。しかしそれをしないのは、そのような環境をつくることがスターバックスのミッションやビジョンに反するからに他なりません。
ビジネスを成長させるためには、するべきことが大量にあります。製品の生産、改良、企画、宣伝、実店舗やECサイトなどの準備や運営、スタッフの教育など、施策は多岐にわたります。ミッションやビジョンが不明瞭のままではこれら全ての施策がバラバラになり、方向性がブレてしまいます。
たとえば、新しい化粧品をつくったので雑誌で宣伝したいと考えたとします。しかしミッションやビジョンが定まっていなければ、当然それに共感してくれる顧客がどのような人なのかが見えてきません。そのため、どういった雑誌に掲載すれば効果が高いかを判断することができません。
これは極端な例ですが、50代女性の不満を解消することをミッションに掲げた企業が、10代ユーザーが圧倒的に多いTikTokでバズっている女子高校生をイメージキャラクターとして起用したら、どうなるでしょう。
ターゲットとなる50代女性の多くがその女子高校生を知らない可能性も高いですし、50代をターゲットにしているのに10代を起用するという点で、かえってマイナスイメージを与えてしまう恐れもあります。
ビジョンやミッションが定まっていれば、ターゲットが具体的に決まります。そうすれば、どの媒体で宣伝すれば効果的なのかが決まっていきます。さらには、広告を打つ時間帯やキャッチコピーの文言、雰囲気なども決まっていくのです。これらの決断の拠り所となるのが、ミッションでありビジョンというわけです。