私は、単品を扱うよりも、SHIROのように多くの製品を取り扱うことを推奨しています。
化粧品や健康食品業界では、長らく王道のビジネスモデルがありました。それは、「単品リピート通販」です。
EC・D2Cビジネスを立ち上げるときに扱う製品はひとつでいい。そのひとつの製品を定期的に購入してもらうことによって大きな売上をあげるやり方が賢い、という考え方です。
しかし、今やそのやり方は通用しなくなってきています。その理由のひとつが、プロダクトライフサイクルが短くなっていることです。
プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に登場し、衰退して市場から消えるまでのプロセスのことです。パッケージデザインやブランド名などをリニューアルする「リブランド」をおこなうことで息を吹き返すこともありますが、リブランドをするまでのサイクルも以前に比べて短くなってきています。
取り扱う製品がひとつしかないと、顧客がそれに飽きたときにほかの製品でカバーすることができないため、顧客は離脱してほかのブランドに流れてしまいます。しかし、たとえば先ほどのSHIROのように多様な製品を展開していれば、ブランドそのものに飽きたわけではなければ、顧客は他の製品をいろいろと試すことができるわけです。
「単品リピート通販」の落とし穴はもうひとつあります。製品がひとつしかない中で売上を保ち続けるためには、客数を増やすしかないという点です。
売上は、【顧客数×客単価×購入頻度】で決まります。単品リピート通販の場合、客単価と購入頻度をあげることは非常に難しいため、顧客数を増やすしかありません。しかし、新規顧客を増やすのは既存顧客の購入単価を上げること、購入頻度をあげることよりもはるかに大変なのです。こういった理由から、私は「単品リピート通販」はお勧めしていません。
実際に、最初は単一の商品しかなかった「BARTH」というブランドは、売上をさらにあげるために戦略を変え、ブランドの要であった「重炭酸」というキーワードはそのままに、さまざまな施策を打ち出しました。たとえば、既存の製品よりも大きなサイズの入浴剤を販売したり、入浴剤以外にも洗顔やボディクリームなどを売り出したりと精力的に製品のラインナップを増やしています。その結果、多くのドラッグストアに並ぶようになりました。このブランドのように、横展開ではなく縦展開(製品のサイズを変えてラインナップを増やす)という方法も有効です。
たとえば、よく期間限定で多くのメーカーが容量を増量したビッグボトルを販売していますが、ビッグボトルは全体的に好まれやすく、非常に売れ行きが好調です。ほかにも、成分を通常よりも多めに配合した「プレミアムバージョン」なども注目が集まりやすいものです。
ただ、縦展開だけでは「単品リピート通販」であることに変わりはありませんから、軸となる製品と一緒に使ってもらえるような関連商品を横展開していくことがポイントです。