Business customer service concept
クリームチームマーケティングでは150社250ブランドの支援実績と独自のノウハウを元に、戦略立案から施策実行まで一気通貫して支援しています。化粧品・健康食品D2Cビジネスに課題がある方はお気軽にご相談ください。⇒無料相談を予約する

統一感をもって幅広いソリューションを提供している例

一例を紹介しましょう。「SHIRO」という自然派コスメブランドがあります。SHIROが取り扱っている製品は主に化粧品ですが、そのほかにもボディケアやヘアケア、シロップやクッキーなどの食品も販売しています。店舗の他にカフェも開設し、扱う領域はコスメの域を大きく超えています。

 SHIROの優れたところは、それらの製品に「統一感」が見られるところです。

 SHIROのECサイトを見ていただくとわかりますが、パッケージは至ってシンプルです。パッケージに統一感があることで手広く製品を展開しても雑多な印象を与えないように思えるかもしれませんが、実はそれだけではありません。

 SHIROは「自分たちが本当に使いたいと思えるものだけを正直に創り続ける」「人・地球・社会に対しても誠実に正しいことを行なう」と明言しています。この想いが軸にあるからこそ、化粧品だけでなく、食品やホームケアアイテムなどのラインナップを幅広く展開してもそこに統一感があるのです。

 さらには、ホームページのなかで「ものづくり」や「社会への想い」など、SHIROというブランドが持つ価値観についても多くの情報を提供しています。顧客はこれらの情報を目にし、SHIROというブランドが持つミッションやビジョンを理解し、共感を抱くのです。

 このようにミッションやビジョンが明確であればあるほど、単なる化粧品メーカーを超えていくことができます。これは先ほどのスターバックスの例とも共通しますが、自分たちを単なるコーヒーメーカーや単なる化粧品メーカーと捉えているのか、それとも「サードプレイスという居場所を提供する役割を担う会社である」「自分たちが本当に使いたいと思えるものだけを正直に創り続ける会社である」と捉えているのかによって、それらを実現するためのソリューションとしてのプロダクトやサービスの規模が大きく変わってくることがおわかりいただけるでしょう。プロダクトやサービスの規模が大きくなれば、連動して売上も増加します。

 先ほどもお伝えしたとおり、提供するソリューションは必ずしもモノである必要はありません。たとえば、肌診断サービスや美容・健康に関するカウンセリング、コンサルティングなどのサービスも立派なソリューションです。まだまだ化粧品や健康食品業界ではサービスとしてのソリューションを提供しているメーカーは非常に少ないため、この分野はチャンスとも言えます。

 

単品では飽きられてしまう

私は、単品を扱うよりも、SHIROのように多くの製品を取り扱うことを推奨しています。

 化粧品や健康食品業界では、長らく王道のビジネスモデルがありました。それは、「単品リピート通販」です。

 EC・D2Cビジネスを立ち上げるときに扱う製品はひとつでいい。そのひとつの製品を定期的に購入してもらうことによって大きな売上をあげるやり方が賢い、という考え方です。

 しかし、今やそのやり方は通用しなくなってきています。その理由のひとつが、プロダクトライフサイクルが短くなっていることです。

 プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に登場し、衰退して市場から消えるまでのプロセスのことです。パッケージデザインやブランド名などをリニューアルする「リブランド」をおこなうことで息を吹き返すこともありますが、リブランドをするまでのサイクルも以前に比べて短くなってきています。

 取り扱う製品がひとつしかないと、顧客がそれに飽きたときにほかの製品でカバーすることができないため、顧客は離脱してほかのブランドに流れてしまいます。しかし、たとえば先ほどのSHIROのように多様な製品を展開していれば、ブランドそのものに飽きたわけではなければ、顧客は他の製品をいろいろと試すことができるわけです。

 「単品リピート通販」の落とし穴はもうひとつあります。製品がひとつしかない中で売上を保ち続けるためには、客数を増やすしかないという点です。

 売上は、【顧客数×客単価×購入頻度】で決まります。単品リピート通販の場合、客単価と購入頻度をあげることは非常に難しいため、顧客数を増やすしかありません。しかし、新規顧客を増やすのは既存顧客の購入単価を上げること、購入頻度をあげることよりもはるかに大変なのです。こういった理由から、私は「単品リピート通販」はお勧めしていません。

 実際に、最初は単一の商品しかなかった「BARTH」というブランドは、売上をさらにあげるために戦略を変え、ブランドの要であった「重炭酸」というキーワードはそのままに、さまざまな施策を打ち出しました。たとえば、既存の製品よりも大きなサイズの入浴剤を販売したり、入浴剤以外にも洗顔やボディクリームなどを売り出したりと精力的に製品のラインナップを増やしています。その結果、多くのドラッグストアに並ぶようになりました。このブランドのように、横展開ではなく縦展開(製品のサイズを変えてラインナップを増やす)という方法も有効です。

 たとえば、よく期間限定で多くのメーカーが容量を増量したビッグボトルを販売していますが、ビッグボトルは全体的に好まれやすく、非常に売れ行きが好調です。ほかにも、成分を通常よりも多めに配合した「プレミアムバージョン」なども注目が集まりやすいものです。

 ただ、縦展開だけでは「単品リピート通販」であることに変わりはありませんから、軸となる製品と一緒に使ってもらえるような関連商品を横展開していくことがポイントです。

 

顧客が感じる「ベネフィット」は何か?

製品をつくる側としては、配合成分やテクスチャーなどの「機能」にこだわってつくっていることをアピールしたい、知ってほしいという思いが出てくるかもしれません。

 それらを顧客に伝えることも重要なことではありますが、それだけではなく、顧客が製品を受け取り使ったときに何を感じるのか、それを使うことでどのように生活が変わるのかという「顧客ベネフィット」の視点を持つことがとても重要です。製品を使うことで生活が便利になった、悩みが解決した、よい変化があったなど、何らかのベネフィットがあることが不可欠なのです。

 ブランド側がいくら強い想いを持っていたとしても、顧客がベネフィットを感じなければ購買につながりにくいため、長く愛されるブランドにはなれません。メーカーが提供する価値と顧客が受け取るベネフィットは、一致させなければならないのです。

 マーケティングの世界で有名な「ドリルと穴」というエピソードがあります。「ドリルを購入しにきた客が欲しいのは、ドリルではなく穴である」というものです。

 売る側にこの視点がなければ、ドリルを買いに来た人に対してドリルしか案内することができません。ドリルの在庫がなくなっていた場合には、「ドリルは売り切れてしまいました」としか案内しようがなく、販売機会を逃してしまうでしょう。しかし、「顧客が欲しいのは穴である」とわかっていたならば、ドリルのほかにスコップを勧めることもできますし、ショベルを勧めることもできるわけです。

 ドリルが売り切れていても何の問題ありません。穴が楽に掘れればいいわけですから、顧客にとっても必ずしもドリルを買う必要がないからです。

 むしろ、ドリルよりも楽に穴が掘れる道具を紹介することができれば、顧客満足度は大きくなるでしょう。メーカーは、この視点を持つことがとても重要です。

 

顧客ベネフィットを打ち出して
大きく成功した初代iPod

今から半世紀ほど前、音楽は家で聴くものでした。その後ラジカセが登場し、音楽を聴く機器を持ち運べるようになり、やがてSONYがウォークマンというポータブルオーディオプレイヤーを発明します。私たちは、カセットテープやCDを持ち運び、ポータブルオーディオプレイヤーを使ってどこででも音楽が聴けるようになりました。

 その後、iPodが登場しました。iPodはそれまでのポータブルオーディオプレイヤーとは異なり、機器そのものに音楽をデータとして保存することで、カセットテープやCDなどを持ち運ばなくてもiPodさえあれば音楽が聴ける機器です。これは当時、非常に画期的なことでした。

 初代iPodの容量は5GBでした。しかしスティーブ・ジョブズが初代iPodのプレゼンでアピールしたのは、5GBという「機能」ではありません。彼はプレゼンの中で「ポケットに1,000曲」と発言し、大きな話題を呼んだのです。

 顧客としては、5GBと言われてもそれがどれくらいすごいのか、すぐにはピンときません。しかし、「ポケットに1,000曲」と言われると、「楽に持ち運びができる小さな機器の中に、1,000曲もの膨大な曲をダウンロードすることができる」ということがすぐにイメージできます。

 これこそ、機能と顧客ベネフィットを一致させ、さらに顧客ベネフィットを打ち出した成功例と言えます。

 

見習いたい「ジャパネットたかた」の伝え方

同じように、機能よりもベネフィットを伝えることで大人気の通販会社に成長したのがジャパネットたかたです。惜しまれながら退任されましたが、創業者の高田明氏のトークは多くの人を魅了しました。

 ジャパネットたかたでは電化製品を扱うことが多く、ハンディカムや電子辞書なども番組内でよく登場しています。電化製品は製品の中でも機能やスペックが表に出ることが多く、「何百万画素」「何時間連続録音」「1回の充電で何時間使用可能」といった機能面をアピールする広告がよく目に入ります。

 しかしジャパネットたかたの場合は、「このハンディカムがあれば、お孫さんと公園に行ったときにたくさんの思い出が残せます!」というふうに、その製品を使うことで顧客が得られるベネフィットに徹底的にフォーカスして製品を紹介しているのです。

 化粧品や健康食品に置き換えるならば、「美容成分が50個入っています」「レモン何千個分のビタミンCが含まれています」という機能だけでなく、「この製品を使うことで、10年後のあなたのお肌を守ります」といったような伝え方をすることが肝要です。化粧品や健康食品は薬機法などの法律的な問題もあるので思い通りにベネフィットを伝えることが難しい側面もありますが、「顧客ベネフィットを伝える」という視点は不可欠な視点なので、忘れないようにしてください。

 

この記事の著者

山口尚大
山口尚大通販・D2Cコンサルタント クリームチームマーケティング代表兼CEO
2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中
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山口尚大

2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中

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