ここまでで、ECサイトや通販サイトの市場の大きさ、取り組みやすさについてお伝えしました。なかでも、化粧品や健康食品は製品開発・販売のハードルが低くなっている、参入しやすくなっているということがおわかりいただけたことと思います。
だからといって「ただ参入さえすれば収益をあげられる」「製品をつくってECサイトに並べておけば売れる」というほど簡単ではありません。
しかし、なかには「簡単に参入できる」というメリットばかりに注目する人も少なくありません。私のところにも、「よさそうな商品をつくったので売りたい」といったご相談や、「日本にはまだない商品を海外から輸入したから、これを扱いたい」と、マーケティングのことは全く考えずにご相談に見える方も一定数いらっしゃいます。
確かに、「いい商品と出会ったからそれを世に出したい」と思う気持ちはよく理解できます。競合が少なく、類似する商品が少ない市場であれば、思いつきで商品を売り出しても成功する確率は高いかもしれません。
しかし化粧品や健康食品のような巨大市場では、「いい商品だから、Amazonに出品したら自動的にヒットするだろう」「ECサイトをつくって並べておけば買ってくれるだろう」と気軽に参入しても、ほとんど成功することはできないのです。仮にあなたの周りにそうやって成功した人がいたとしたら、その人はごく少数のレアケースか、実は隠れて裏で緻密なマーケティングや販促をおこなっているかのどちらかだと考えるべきです。
異業種から参入して成功を勝ち取る人々と参入してもまったく成果があがらない人との差は、どこにあるのでしょうか。
私はこれまでこの業界でたくさんのメーカー様、事業者様を見てきました。150社以上にコンサルティングをしてきたなかで、うまくいく企業にはある共通点があることがわかりました。それは、「EC・D2Cに必要なノウハウ」のほかに「商品やビジネスに賭ける想い」があることです。
あるメーカーは、社員が肌トラブルに悩みを抱えていることが化粧品市場に参入する大きなきっかけとなりました。ほかにも、「できるだけシンプルな自然素材だけを使ったコスメをつくりたい」「将来、親の介護が心配で何か予防になるような健康食品がつくりたい」というように、成功するメーカーは参入する確固たる動機を持っているのです。
化粧品や健康食品市場に参入することを検討されている方は、まずは自社にこのような「強い想い」があるかどうかを確認してほしいと思います。