効率的なシステムを構築する

効率的なシステムを構築する(1)ECシステム・ ロジスティクス

toy boxes in small shopping cart on laptop, e-commerce concept
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EC システム選びが成功の鍵を握っている

ECサイトにおいて、どのECカートシステムを選ぶかは、購買率やリピート率に大きく影響するため非常に重要です。ECカートシステムには膨大な数がありますが、選定にあたって注目するべきポイントは、「UI・UXの自由度の高さ」「マーケティング施策の豊富さ」「データ計測の深度」「オペレーションのしやすさ」の4つです。

1 UI・UXの自由度

UI(ユーザーインターフェース)とはユーザーとサービスの接点(インターフェース)のことで、ユーザーがECサイトを閲覧したときに見ることのできる全ての要素がUIにあたります。たとえば、ECサイトのトップページやヘルプページ、ショッピングカートの中身、製品の画像やイメージ画像などもUIです。

これに対してUX(ユーザー体験)とは、ECサイトを閲覧したり商品を購入したりしたときにユーザーが得る体験のことです。カートに入れてから決済完了までがスムーズで快適だった、商品の情報が見やすく比較検討が楽だった、というようなユーザーの体感がUXと言えます。UIとUXは、ECシステムによって自由度が大きく異なります。

たとえばショッピングカートシステムの多くは、デザインのテンプレートがあらかじめ用意されています。

テンプレートのメリットは、ゼロからデザインをする必要がないことです。管理画面上で商品を登録したり、決済方法を登録したりしていけば、すぐにでもECサイトが完成します。ただ、テンプレートの自由度が低いと他のECサイトとの差別化が非常に難しくなってしまいます。

なかには自由度がほとんどなく、変えられるのはロゴや画像、サイトの全体的なカラーのみ、というECカートシステムも少なくありません。

他社と差別化するためには、やはりオリジナルデザインが必須です。特に化粧品の場合は、「美しい」「みずみずしい」といったように感覚に訴求する必要性が高いため、オリジナルデザインの重要性は健康食品のECサイトに比べてはるかに高いと言えます。UIに自由度が低ければ、当然UXにも影響します。

 

UI designers discussing interface

2 マーケティング施策の豊富さ

マーケティング施策とは、一言で言うと「売上を上げるための施策」ですたとえば Amazonで商品を検索すると、商品の下に「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」「類似商品と比較する」「一緒に購入」などの文言とともに、別の商品が画面に表示されます。

これをレコメンド機能と呼びますが、レコメンドで表示される商品はユーザーの購買意欲が高い商品と関連しているため、ユーザーが追加で購入することも多く、結果的に Amazon全体の売上があがる仕組みになっています。

また、自宅の郵便番号を入力すると自動的に住所が表示される「フォームアシスト」という機能がありますが、この機能を使えばユーザーの入力の手間が減ります。直接的に売上をあげるための施策ではないかもしれませんが、ユーザーにとって使いやすければ、「このECショップでは快適な買いものができた」と評価してもらえる可能性が高まります。

ほかにも、会員登録することによって住所入力が不要になったりポイントが貯まったりする会員機能やお得な情報を配信できるメール配信機能なども、売上をあげるための施策のひとつです。さらには、商品の割引設定や予約販売、まとめ買い機能などもマーケティング施策として挙げられます。

ECカートシステムを選ぶときには、こうしたマーケティング施策がどの程度実現できるかもポイントです。カートシステム自体にこうした機能が実装されていなかったとしても、周辺のシステムと連携することで実現できるのであれば、問題ありません。

UX mobile application wireframe.

化粧品や健康食品のECシステムを選ぶにあたり、

必ず搭載したい機能は次の7つです。


①ポイントが付与できるか
②定期リピートに対応しているか
③メルマガ配信・ステップメール配信が送れるか
④割引設定ができるか
⑤会員ステージとステージアップ機能があるか
⑥送料の詳細決定ができるか
⑦クーポンを発行できるか

①ポイントが付与できるか

購入するとショップのポイントが貯まり、一定数のポイントが貯まったら割引クーポンとして使える、ノベルティがもらえるなどのポイントサービスは、化粧品や健康食品の多くのECサイトが取り入れています。

顧客にとっては、商品を購入したらポイントがつくことが当たり前になっているため、購入してもポイントが全くつかないショップは「損」と捉えられてしまう可能性があります。

②定期リピートに対応しているか

顧客が定期購入を設定すると、毎月決まった日に決済が行われ、商品を発送する手配をしなければなりません。そのため、毎月決まった日に受注データをシステムに送信して決済を行うように設定する必要があります。定期購入の機能を搭載するのなら、必ず入れておきたい機能です。

全ての顧客が毎月1日から定期購入期間がスタートするわけではありませんから、一人ひとり設定内容が異なります。また、マイページから購買頻度を変えたりお届けを休んだりできるかどうかも、顧客にとっては重要なポイントです。

マイページから顧客がこれらの操作をすることができないショップでは、問い合わせフォームから問い合わせなければならなかったり、カスタマーセンターに電話をしなければならなかったりします。これは、顧客にとっては非常に面倒に感じるものです。

③メルマガ配信・ステップメール配信が送れるか

お得な情報を定期配信できるメルマガの配信機能やステップメール機能は、マーケティング施策において重要な要素のひとつです。

ステップメールとは、あらかじめ設定したタイミングで顧客にメールを送信して購買意欲を高める施策のために使われるメールです。顧客が初めて商品を購入したタイミングや商品を発送したタイミングのほかにも、商品を使い始めるタイミングや使い終わったタイミングを見はからってメールを送ることもできます。

④割引設定ができるか

化粧品や健康食品のECショップに多いのが、初回限定割引や期間限定割引です。ほかにも、合計金額が一定額以上の場合は割引にするなど、ショップによって割引の施策は異なります。柔軟に設定ができるカートシステムを選ぶのも重要なポイントです。

⑤会員ステージとステージアップ機能があるか

楽天市場のように、年間の購入額が5万円を超えるとシルバー会員、10万円を超えるとゴールド会員など、購入累計額によって会員ステージが決まり、ステージによってポイント付与率や割引率を変える。このような施策をとるECショップも少なくありません。会員ステージ機能は、購入すればするほどお得になるシステムです。

⑥送料の詳細決定ができるか

商品別に送料を設定できると、マーケティング施策がさらに広がります。たとえば、トライアルは送料込み・ワンコインで購入できるようにする、特定の商品を送料無料にする、一定額以上購入した場合は送料無料にするといった具合です。システムに柔軟性があれば、期間限定で送料無料キャンペーンを実施するといった施策も可能になります。

⑦クーポンを発行できるか

最後がクーポンです。クーポンも種類が豊富だと売上の向上につながります。期間限定クーポンや2回目の購入限定クーポンのほかにも、回数や期間を限定したクーポンなどは顧客の目を引きます。

上記の7つに加え、2 0 2 2年現在では、多くのユーザーを抱える他のサービスと連携することも考えておくと強みになるでしょう。LINE連携や Instagramショッピング連携、Googleショッピング連携などです。また、問い合わせ対応のためのチャットボットなども、あると便利です。問い合わせを自動で振り分けたり、適切な担当者につないだりもできるので、問い合わせ対応を効率化できます。

3 データ計測の深度

ECサイトを訪れたユーザーの年齢層や性別、どこからECサイトに流れてきたのかという流入経路、何の商品を探しているのかといったデータのほかにも、どの製品が一番売れているのか、セットで買われやすい製品は何か、その製品を最も購入している人はどのような属性なのかなどの多種多様なデータが集まれば集まるほど、ターゲット層を明確に把握することができるようになります。

こうした購買履歴などのデータはECカートシステムに集積されていますが、データをどの切り口で分析できるのかは、システムによって異なります。ちなみに、押さえておきたい分析方法はアドコード分析、RFM分析、LTV分析の3つです。

アドコード分析 (広告分析)

アドコード分析とは、どの広告から来た人がいくらくらい製品を購入したのか、この広告はどういった属性の人が多くクリックしたのかなどの広告の効果について、出稿した広告とECサイトを紐付けて分析する機能です。

 

RFM 分析

RFM分 析 と は、 直 近 の購 入 日(Recency)、 こ れ ま で の購 入 回 数(Frequency)、購入金額(Monetary)の頭文字を取った分析手法です。

たとえば、「直近の購入が1カ月前で、これまで毎月1 0回、合計5万円ぶん購入している顧客」と「直近の購入が1カ月前で、これまでに2回、合計5,0 0 0円購入している顧客」とでは、訴求するキャンペーンの内容やおすすめする商品は異なるはずです。

 

LTV 分析

LTV(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)とは、顧客が一定期間内にECサイトでどれくらいの額を使ったのかを示す指標です。ECシステムにLTV分析の機能がついていれば、メーカー側は「このお客さまは毎月5,0 0 0円、年間6万円の製品を購入くださっている」という情報を把握することができます。

LTV分析の機能がなければ、メーカーは購入履歴を手動で追って情報を集約し、分析しなければなりません。それでは手間も時間もかかってしまいます。

 

これらの3つの分析方法が搭載されていれば、マーケティング施策がやりやすくなります。一方で、こうした機能が不十分なECカートシステムを選んでしまうと、データを集めて分析するためのマンパワーが余計にかかってしまいます。

 

Presenting analysis

4 オペレーションのしやすさ

ECシステム選定の際に注目したい4つめのポイントが、オペレーションのしやすさです。これは、ECカートシステムの管理画面が使いやすいかどうかと直結します。

たとえば、使いたい機能があるのにメニューがわかりづらくて機能を探すのに手間がかかる、何度もクリックして画面遷移をしなければ必要な管理機能にたどり着かない、動線がわかりづらい、直観的に操作しにくい。このようなオペレーションがしにくい管理画面では、どうしてもシステム運用やデータの解析などの重要な作業以外で無駄な時間がかかってしまいます。

また、運営中にわからないことや不具合が出てきたときのサポートの手厚さも、カートシステムによって異なります。最初のうちはサポートを必要とする機会が多い可能性がありますから、不安な場合はサポートがある程度手厚いECシステムを選定するといいでしょう。

もうひとつ、重要なのがパートナー会社との連携のしやすさです。たとえば、ECサイトで注文が入ると、倉庫の在庫を確保するために倉庫に情報を送ります。しかしリアルタイムでECサイトと倉庫の在庫数が連動できなければ、在庫がないのに注文はできるという状況になってしまうことがあります。

また、注文データをワンクリックで倉庫や配送業者に送信できるシステムと、一旦Excelファイルでダウンロードしたあとで CVS形式にして倉庫や配送業者に送信しなければならないようなシステムとでは、効率面でかなり差が出てしまいます。

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自社に最適なEC システムを見つけることは困難

ECカートシステムの重要性についておわかりいただけたと思いますが、実はここからが問題です。ECサイトに欠かせないカートシステムですが、その数は90を超えるため、すべてを比較検討してベストなシステムを選ぶことはとても骨の折れる作業となります。

ただし、カートシステムにも種類があるので、その知識を持っておくと選択肢が絞られて選びやすくなるでしょう。カートシステムは主に、ASPカートとセミパッケージ、フルスクラッチに分けられます。まずは、この3種類について概要をお伝えします。

ASP カート

ASPカートは、クラウドなどを経由してカートシステムを提供するサービスで、自社でカートシステムを開発する必要がないぶん、安く利用できるというメリットがあります。

一方で、搭載されている機能が決まっており、独自に機能を追加するのが難しいのも ASPカートの特徴です。

 

フルスクラッチ

フルスクラッチは、ゼロベースで自社に合わせて開発するカートシステムの総称です。ゼロから開発するため、数千万円から数億円のコストがかかります。ユニクロや GUのような大規模なECサイトを構築する場合には、独自で搭載したい機能を自由に開発できるフルスクラッチが最適です。

 

セミパッケージ

ASPカートとフルスクラッチの中間にあるのがセミパッケージです。セミパッケージでは、ASPカートをベースとしながらも、追加したい機能を開発できます。

 

ECカートシステムにはこの3種類がありますが、スタートアップではASPカート一択と考えておいて間違いありません。

例外があるとすれば、初年度の売上目標が10億円を超えるような場合です。この場合はスタート時から事業規模がかなり大きいプロジェクトになりますから、将来の成長性を見越しても最初からフルスクラッチを検討する価値はあるでしょう。

ただ、一般的にはASPカートの中から自社にとってベストなシステムを選定することが重要です。自社で選定することが難しい場合には、コンサルタントなどの外部の専門家に相談するのも有益な方法です。

Shopping cart on white background

EC カートシステム選びの注意点

ECカートシステムは数が多いため、最適なシステムを選ぶのは大変な作業です。しかし、だからといって「とりあえず安いASPカートから初めて、事業が軌道に乗ったら他のASPカートに乗り換えよう」という考えは危険です。事業の途中でカートシステムを乗り換えるとコストがかかるのも理由のひとつですが、最大の理由が、顧客の離脱が起きるからです。

たとえば、最初にある無料のASPカートでECサイトを立ち上げて顧客が1,000人集まったとしましょう。この1,000人の顧客は、今のカートシステム上で会員登録をしています。しかし、乗り換え先のカートシステムには会員情報を引き継ぐことができません。

メーカーは、ECサイトのドメインは引き継ぐことができます。そのため、顧客は今まで通り、ブックマークなどからECサイトにアクセスすることはできるわけです。しかし顧客からは見えないところでカートシステムが変わっていますから、また新たに会員登録をしてもらわなければならないのです。

これは、定期コースの登録についても同様です。定期コースに登録するとき、顧客は名前や配送先に加えてクレジットカードの情報もシステムに登録しているものですが、システムを入れ替えることによって、このクレジットカードの情報も全てリセットされてしまうのです。

ヘビーユーザーやある程度頻繁にECショップを利用してくれている顧客であれば、サイトがリニューアルする案内もスムーズに届くでしょう。しかし、この1,000人の顧客の中には、登録しているメールアドレスが使えなくなっている人もいるはずです。そうすると「新たに会員登録をしてください」という案内が届かない人が一定数出てきます。

さらに、案内が届いた人の中には、改めて会員登録をするのが面倒だと感じて離脱する人もいます。こうして、システムを乗り換えたことによって相当数の顧客が離脱してしまうのです。

カートシステムを乗り換えることで、失わなくてもよかったはずの顧客を失うリスクがあります。できるだけ乗り換えせずに済むよう、カートシステムを選ぶときには最初から拡張性の高いシステムを選ぶようにしましょう。

Stop sign on the pavement

この記事の著者

効率的なシステムを構築する(1)ECシステム・ ロジスティクス | 通販化粧品・健康食品業界に特化したコンサルティングとダイレクトマーケティング支援
山口尚大EC・通販コンサルタント クリームチームマーケティング代表兼CEO
2006年より化粧品、健康食品業界に特化したダイレクトマーケティング支援を行い、これまで150社250ブランド超の売上アップを実現。業界に特化した豊富な経験やノウハウ、リソースを提供している。

・著書『化粧品・健康食品業界のためのダイレクトマーケティング成功と失敗の法則』
・著書『化粧品・健康食品EC・D2C新規参入パーフェクトガイド』
・書籍と同名のコラムを日本ネット経済新聞にて連載中