インターネットの普及によって、通信販売市場は大きく成長しました。あらゆる商品やサービスが通販で売られており、今や、通販で買えないものはないと言ってもいいほどです。
市場も巨大化しており、2019年時点で物販系の通販市場、サービス系通販市場、デジタル系通販市場の合計は19兆3,609億円もの市場規模となっていました。
この動きに新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけました。人々の外出が制限されたことで、通販やECサイトなどオンラインで商品を購入する動きが加速したのです。
公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)がおこなった2020年4月~2021年3月までの通信販売市場の売上高に関する調査では、2020年の通販市場は前年比20%増を記録し、市場規模は10兆6,300億円を超えました。2011年には約5兆円であった通販市場は、この10年で2倍に成長したことになります。
化粧品のEC市場も同じような伸び率を記録しており、2019年には3,757億円だった市場規模は、コロナ禍の2020年には4,166億円となりました。ただ、化粧品市場全体が2兆円を超えていることを考えると、化粧品市場のEC化率はまだまだ高いとは言えません。その意味では、化粧品のEC化にはまだまだ伸びしろがあるとも言えます。
2020年に比べると、2021年は人の動きも回復基調にありました。外出機会が増えて繁華街にも人が戻り、通販やECサイトに流れていた消費者が実店舗に戻る動きも見られました。
とはいえ、通販市場やEC市場が以前の規模に縮小するかというと、その可能性はかなり低いでしょう。
たしかに、化粧品はほかの商品に比べると実物を見ずに購入するのはハードルが高いかもしれません。実際に使ったときの感触や香りは画像ではわかりませんし、自分の肌に合わなければトラブルが起きる恐れもあります。
そこで、実店舗に行って目当ての商品を手に取って試すものの、そこでは購入せず、ECサイトで購入するという動きが増えています。また、実店舗のスタッフが来店した顧客を自社のECサイトに誘導するケースも出てきています。
ECサイトを活用すれば、顧客は商品を自宅で受け取ることができるので、実店舗から持ち帰る手間が省けます。店舗側も在庫を多めに置かずに済むというメリットがあります。実店舗ではスペースの問題で商品をすべて並べることが難しい場合もありますが、ECサイトならスペースの制限はありません。まさにECとリアルの逆転現象が起きています。ECがメインで店舗は補足的な役割。顧客と店舗、双方にとって利便性が高いため、化粧品のEC活用は今後も拡大していくものと考えられます。