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規で化粧品や健康食品業界に参入した企業が成功確率をあげるた めには、正しいことを正しい順序でおこなう必要があります。そ のためには、新規参入プロセスの全体像を把握しておかなければなりま せん。
新規参入プロセスの全体像は、次のようになっています。それぞれの プロセスにおいてここでは概略を述べるにとどめ、重要なことを2章以 降でお伝えしていきます。
ここまでで、ECサイトや通販サイトの市場の大きさ、取り組みやすさについてお伝えしました。なかでも、化粧品や健康食品は製品開発・販売のハードルが低くなっている、参入しやすくなっているということがおわかりいただけたことと思います。
だからといって「ただ参入さえすれば収益をあげられる」「製品をつくってECサイトに並べておけば売れる」というほど簡単ではありません。
しかし、なかには「簡単に参入できる」というメリットばかりに注目する人も少なくありません。私のところにも、「よさそうな商品をつくったので売りたい」といったご相談や、「日本にはまだない商品を海外から輸入したから、これを扱いたい」と、マーケティングのことは全く考えずにご相談に見える方も一定数いらっしゃいます。
確かに、「いい商品と出会ったからそれを世に出したい」と思う気持ちはよく理解できます。競合が少なく、類似する商品が少ない市場であれば、思いつきで商品を売り出しても成功する確率は高いかもしれません。
インターネットの普及によって、通信販売市場は大きく成長しました。あらゆる商品やサービスが通販で売られており、今や、通販で買えないものはないと言ってもいいほどです。
市場も巨大化しており、2019年時点で物販系の通販市場、サービス系通販市場、デジタル系通販市場の合計は19兆3,609億円もの市場規模となっていました。
この動きに新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけました。人々の外出が制限されたことで、通販やECサイトなどオンラインで商品を購入する動きが加速したのです。
公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)がおこなった2020年4月~2021年3月までの通信販売市場の売上高に関する調査では、2020年の通販市場は前年比20%増を記録し、市場規模は10兆6,300億円を超えました。2011年には約5兆円であった通販市場は、この10年で2倍に成長したことになります。
化粧品のEC市場も同じような伸び率を記録しており、2019年には3,757億円だった市場規模は、コロナ禍の2020年には4,166億円となりました。ただ、化粧品市場全体が2兆円を超えていることを考えると、化粧品市場のEC化率はまだまだ高いとは言えません。その意味では、化粧品のEC化にはまだまだ伸びしろがあるとも言えます。
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理店や卸などの形態ではなく、メーカーとしてブランドを持ち商品を販売していく場合には、製品を自社で開発しなければなりません。しかし、製品を自社で開発するのは大変なこと。社内でおこなうならば社内にラボなどの開発部署が必要ですし、研究者を雇用するとなれば人件費も多額にかかります。
商品化に成功したあとも安定して生産し続けられる品質が求められますし、売れ続けるためには、ユーザーの声を反映してブラッシュアップし続けることも重要です。事故が起こらないように、製品の安全性にも配慮しなければなりません。このように、自社で製品を開発するとなると、大きなコストと手間がかかるのです。
しかし、化粧品や健康食品においては、実は自社で製品を開発しなくても、希望に沿った製品をつくることができる仕組みが用意されています。それがOEMというシステムです。実は、化粧品や健康食品業界の8割以上が自社で製品を開発せずにOEMを利用しています。
OEMとは、「originalequipmentmanufacture」の略で、OEMメーカーと呼ばれる製造メーカーが他社のブランドの製品を製造することを指します。OEMメーカーは自社に工場を持ち、受託した製品を研究・開発します。
委託するメーカー側は、「このような成分を含んだ化粧水をつくりたい」「この素材を使った基礎化粧品のラインをつくりたい」などのリクエストをOEMメーカーに伝え、OEMメーカーはメーカーと協力してそのリクエストに沿った製品を開発・製造します。そのほかにも、すでにOEMメーカーが開発している製品をそのまま商品化するケースもあります。
昨今の社会状況の急激な変化により、主力としていたビジネスに限界を感じて新たな事業を始める経営者が増えています。新たな柱となる事業を選ぶときに重要なのが、業界の将来性や収益の安定性です。そう考えたとき、化粧品・健康食品EC・D2Cはとても有望なビジネスだといえます。そうと言い切れる理由を5つにまとめました。
1 「美と健康」は人にとって永遠のテーマだから
2 女性の富が増え、少子高齢化社会で 「美と健康」に消費が集まるから
3 安定した収益を生み出すビジネスモデルだから
4 日本では美容医療やメンズコスメの波が訪れているから
5 安定し巨大な市場規模を持っているから